内容説明
なぜ戦後70年を経てもなお改憲は実現しないのか.なぜ九条は実行されていないのに残されているのか.改憲,護憲の議論が見逃しているものは何か.糸口は「無意識」である.日本人の歴史的・集団的無意識に分け入り,「戦争の末の」平和ではない,世界平和への道筋を示す.デモで社会を変え,国際社会に九条を贈与しよう.「憲法の無意識」が政治の危機に立ち現れる.
目次
目 次
Ⅰ 憲法の意識から無意識へ
1 憲法と無意識
2 第一次大戦とフロイト
3 天皇制と戦争放棄
4 無意識と世論調査
Ⅱ 憲法の先行形態
1 憲法一条と九条
2 建築の先行形態
3 元老支配から天皇機関説へ
4 戦後憲法の先行形態
5 「戦後」としての徳川体制
Ⅲ カントの平和論
1 中江兆民と北村透谷
2 ヘーゲルによるカント平和論の批判
3 『普遍史』と『永遠平和』
4 カントとマルクス
5 カントとフロイト
6 贈与の力
Ⅳ 新自由主義と戦争
1 反復するカントの平和論
2 交換様式から見た帝国主義
3 資本蓄積の三形式
4 ヘゲモニー国家の経済政策
5 ヘゲモニー国家の交替
6 自由主義と新自由主義
7 歴史と反復
8 将来の展望
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
114
「憲法9条は「無意識」の問題だ」とする柄谷さんの言葉に虚を突かれる。フロイトの言う「超自我」なんだと。社会的規範が内面化されたのではなく、自らの内から来る強迫的な衝動に根差している。象徴天皇制や戦争放棄は、強制されたのでも、戦後俄かに作られたのでもなく、「徳川の国制」に立ち返ったんだと。そして、「武力の行使の放棄」は(国際社会に向けた)「贈与」なんだという言葉に、また胸が搔き乱される。カントの永遠平和、アーレントの帝国主義などを援用しながら論じられる柄谷さんの憲法論。深くて重い投げかけを受けた気がする。2024/10/17
壱萬参仟縁
56
左翼は元来、憲法9条に賛成ではなかったという(3頁)。9条は無意識の問題(5頁)。一種の強迫神経症(17頁)。大事なのは、日本人に戦争に対する罪悪感があるとしても、それは意識的なものではないということ(18頁)。9条は日本人の集団的な超自我で文化(20頁)。マッカーサーは日本が「東洋のスイス」になること唱えた(74頁)。カントがいう「永遠平和」は、戦争をもたらす一切の敵対状態がなくなること(82頁)。単なる休戦ではなく、実質的には「国家の揚棄」を意味(106頁)。2017/03/20
chanvesa
47
9条を思想史的に、柄谷氏流にアプローチしている。氏の著作は難しくて歯が立たないが、この本は講演をまとめているので、わかりやすい。後期フロイトの超自我が9条を維持させたという議論には、この超自我は経時変化していかないか、という観点はおそらく今後の論点としているのかもしれないが、気になる。あとがきで触れている条文のみの保持としての護憲派は超自我を克服した物神化となっているのではないだろうか。大規模な価値転換の際に氏が言われるように大きな代償を払って9条を取り戻すとは昨今の状況からあまり思えないのである。2016/05/28
くまさん
35
憲法9条が当初GHQからではなく幣原喜重郎首相から提案されたこと、戦争で亡くなった方々や生き残った人々の「意志」を超えて凝固した条文を、戦争論や世界史の大きな文脈のなかに位置づけて把握したこと、さらに空疎化したかにみえる条項によってじつは私たちが戦争から守られてきたことを明らかにしてみせるところに、この著者の論述の求心力はある。思想およびその実践の無力や虚しさが語られて久しいけれども、危機の時代に思考の力で立ち向かうその姿勢は抵抗の拠点を踏みはずすことはないように思われる。多くの点で復習の機会になった。2018/10/31
非日常口
30
あとがきに本書の外部と無意識の関係のエッセンスが要約され1条と9条の関係などの考察が面白い。一点、最後の章でアメリカの力が弱まっている現在、これから台頭するであろうインドや中国であり、それが資本主義の自己増殖の限界値で、その限界を迎えるような趣旨の記述が個人的には気になった。著者が根拠としている1つに自然が無限でないことを挙げていたが、技術革新により我々は今資源でないものを資源化する。例えば、海底資源やCO2をエタノール化できるなどがあると思うがその点を過小評価してる気がして、少し飛躍を感じた。2016/11/02
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