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内容説明
2015年7月、欧米諸国との核開発問題協議が劇的な「合意」に達した。これによって、イランは国際社会のキープレイヤーとして大きく浮上する。シーア派イスラム大国として中東地域の「勝ち組」となり、「反米」というスタンスを利用しながら諸外国としたたかに渡り合い、シリア情勢の「黒幕」として暗躍するイラン。特派員として現地に駐在し、政治状況から庶民のメンタリティにまで精通する著者が、世界情勢を読み解くポイントとなるこの国の「素顔」と「野望」について詳細にリポートする。【目次】はじめに/第1章 シーア派大国への野望/第2章 核開発問題協議――「合意」へのプロセス/第3章 うごめく諸外国の思惑/第4章 「反米」の表と裏/第5章 等身大のイラン社会/第6章 日本はイランとどうつき合うべきか/おわりに
目次
はじめに
第1章 シーア派大国への野望
第2章 核開発問題協議――「合意」へのプロセス
第3章 うごめく諸外国の思惑
第4章 「反米」の表と裏
第5章 等身大のイラン社会
第6章 日本はイランとどうつき合うべきか
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
48
イランというとイスラム革命や悪の枢軸発言の影響もあり、宗教的な独裁国家というイメージが常に付きまとっていた。本書の題名からも領土的野望みたいなのを連想するが、実際は最近の核に関する合意とそれまでの歴史、及び現地の生活のレポートであった。他の方も書かれているが、やっぱりこの題名は無いよなあ。内容的には歴史の方では著者の立ち位置が偏っているようにも感じたが、現地レポートの方は出色の面白さ。頭脳流出の悩みは自由主義的だけど、マスコミ関連等は独裁的。読み終えた後でもやはり一筋縄ではいかない国、という印象が残った。2016/08/15
skunk_c
17
まず苦言から。「野望」なんてタイトル、売らんがなではないのか。本書で著者が書くのは、イランは宗教的には窮屈さもあるが極めてのんびりした国で、野望とはほど遠い印象。つまり内容とタイトルが全然マッチしていないのだ。「真実」位が適当だと思った。中東滞在歴の長いジャーナリストが、自身の体験からリアルなイランを語る。アメリカというフィルタを通して言われるイラン像がいかに屈折したものかを痛切に感じさせる。少々とっちらかった印象はあるが、中東で日本が築いてきた「平和国家」という立ち位置の重要性を、改めて感じさせる良書。2016/06/11
チェアー
14
特派員としての実感を交えたイランの現実を描く。イランの歴史を見ることは中東の歴史を概観すること。教育水準や女性登用など、改めてイランが持つポテンシャルを感じる。民主主義や人権という観点では問題はある。しかし、西欧的な基準で一刀両断に批判できるとも思わない。表題のように「イランが野望を持っている」というより、世界のバランスゲームの波の中をうまく立ち回りながら、自分の存在感を少しずつ増しているという感じか。2016/07/29
BLACK無糖好き
12
イランといえばどうしても船戸与一の「砂のクロニクル」で強烈な洗礼を受けたイラン革命、革命防衛隊のイメージが真っ先に浮かんでしまうが、本書は新聞社のテヘラン特派員を務めた著者が、イランの等身大で多面的な全体像を解説しており、認識の幅を広げるのに役立った。国力の源でもある女性の教育水準は高いレベルにある一方で、優秀な若者の頭脳流出で国家の富が失われている面もあり、いかに国内で活躍の場を広げるか、イスラム体制による社会規制の課題も見て取れる。 2016/08/07
jiangkou
9
中東の覇者となりたいイランの話かと思ったら、宗教が権力を握りつつ高い教育水準と産業力を活かしアメリカ追従でない地域外交を行うイランの紹介本だった。発展途上国で力がある国はどれもそうだが民主化、近代化のステップを踏んでいないため政策や外交が国の威信、宗教、イデオロギーに支配されがちで付き合いにくい面もあるが多様性を認めるならイランは中東の重しとして欠かせないということが分かった。わかりやすく良著。2019/07/22