内容説明
念願のマイホームを購入した氷見一家。そこは、元の地主の意向で隣り合う四軒の家が前庭を共有する、少し変わった敷地だった。元地主の仁木家は資産家で、夫は覆面作家だという噂。活動的な妻・美和が四軒のつきあいを主導している能生家。共働きで他三軒とは少し距離を置いている高井戸家。そんな三つの家族とともに、氷見家の幸せな暮らしが始まるが……。誰もが思い当たる「ご近所」の物語。
目次
I 氷見麻衣花――あたしの星はママの星
II 仁木多佳美――永遠の初恋
III 高井戸想子――透明なグラスの底
IV 能生美和――狭間の庭に咲く花は
V 氷見朝子――哀しみのリトルガール
VI 仁木陽平――聖戦の女神
エピローグ 野々山詩織――幸せになるために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
103
タイトル通り近所づきあいもまさしく戦争だった。やっと手に入れたマイホーム。幸せな未来が広がるはずだったが。4家族の家人の独白からなる連作。読み進める内に浮き彫りになるそれぞれの家族の秘密。一見幸せな家族の中に火種がくすぶっている。ちいさな嘘やほころびがつながって大きな事件につながっていく。とてもリアルでおもしろかった。2017/03/23
扉のこちら側
96
2016年606冊め。著者の名前に見覚えがあると思ったら、『ヴィクトリアン・ローズ・テイラー』シリーズの人か。『思い出の時修理します』の谷さんもそうだが、最近コバルト出身作家の一般文芸での活躍が著しい。こちらの作品ではご近所づきあいのあれこれ話。一番精神的に不安定そうだった朝子が一番ずぶとかった。けれど絶対に隣人づきあいはしたくない。私は想子タイプなのでお互いうまくいかないだろうし。2016/07/30
ででんでん
95
タイトルを一瞬見て、ふむふむ幸せ「競争」かと思ったが、正しくは幸せ「戦争」だった。そのとおり、出てくる女性たちは必死にもがいている。おおやひろこさんの解説のように「自分の考える幸せに家族を添わせたくて、自分の考える幸せな家庭を近所に認めてほしくて、戦っている」のだ。それぞれの幸せのかたちは違うはずなのに。でも、読んでる自分だって幸せでありたいと思っているから、デフォルメされていると思える彼女たちの姿の中に、自分に似たものがたくさん見つかる。やめられない止まらないかっぱえびせんのような1冊。読後感は爽快😊2019/03/14
モルク
84
前庭を共有する4軒の家。その一軒に越してきた氷見家。元地主で資産家の仁木家の夫陽平は自称覆面作家、能生家の妻は仁木家と高校時代からの知り合い。そしてそれらの家とは一線をひいている高井戸家。そこに氷見家の前の持ち主堤家も絡む。そろってクリスマスオーナメントをしたりバーベキューをしたり…近所助け合うのはいいけど、人に合わせて生活しなければ為らないのは少々きつい。付かず離れずの御近所関係が理想。いつも逃げてばかりいる陽平に能生家の娘があびせた辛辣な言葉にスッキリ。もっと言ってやれ!2019/03/18
優希
82
ご近所付き合い。順調にいけば楽しいお付き合いになるけれど、それぞれの立場で差別的感情も生まれることでしょう。ご近所付き合いほど難しいものはないと思いました。幸せの価値観は家族でさえ異なるものなので、他人となればより異なるのではないかと感じます。助け合いは必要ですが、結局自分がと思う気持ちにも納得します。2019/06/11