内容説明
人に化けた者たちが徘徊する町で、娘の春子と、いまは異形の姿の妻と、三人で暮らす。あの災害の後に取り戻したこの幸せ。それを脅かすものがあれば、私は許さない……。切ない感動に満ちた再生の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
64
素晴らしく可愛らしい春子はまだ3歳にならない。妻は天井と融合し、主人公は育児と家庭を支えるのに一生懸命だ。冒頭では語られない〝災害〟後の世界に生きる主人公もまた、ただの人間ではないようだ。そんな不思議な空気感は時に寂しく、またほんわかさせてくれる。311前に構築された世界(まさに予言のよう)はディストピア或いはリンボーのようだけれど、お父さんを応援せずにはいられない。いつか来るであろう家族の別れを思いつつ、それでも大切な家族を守る変容した世界での絆の物語。願わくば、春子がいつまでも幸せでありますように。2020/05/07
ちょん
28
積本になってた中から今朝何気なく手に取った1冊でしたが…読み終わった後の衝撃が大きすぎる。感じとしては「深泥丘奇談」や「猫と妻とくらす」に似てるのかなと思ってましたが、最後の解説でこの本を表すステキな表現が…「なにかが終わってしまった世界」。この言葉を読んで背筋のゾゾ気が止まらない(感動で!)。終わってしまった世界なんだけど、何とかして生きようと家族を守ろうと普段の生活をしようとする主人公に涙です。今月の最後の1冊はこれかな、ステキな本でした。SF大丈夫な方にはぜひ読んでいただきたい!2018/06/30
かとめくん
26
この有機的に内と外がつながった不思議な世界観が魅力。その中でそれぞれの登場人物が一生懸命生きる様が描かれる。もうすぐ3歳になる娘を病気(?)の妻を気遣いながら育てる様子は、育児経験者には思わず共感を呼ぶシーンも多く、「とう(お父さん)」と呼んで抱っこをせがむ場面なんか懐かしい。保育園送迎SFという作者の言も言いえて妙。おもしろかったです。 2014/10/08
ぐっち
25
ほのぼのした作品のつもりで手に取ったら、怖い怖い!それなのに切なくて愛おしい。うちの子も「とお」「かあ」と言ってたので、なんだか親近感わきます。児童館でのママ友とか保育園の入園とか、小さい子を持つ家族の日常的な話も出てくるし。主人公と娘の春子ちゃんの会話ははほっこりします。でもちょいちょい怖い影が。ファンタジーかホラーか、いや大森望さんが解説だからSFなのか。ジャンルの隙間にいるような不思議なお話でした。2015/01/31
橘
20
切なかったです。何かはわたしはよくわからなかったですが、何かが起こった町で、家と融合した妻と、3歳の娘と暮らす日々。娘の春子ちゃんがとても可愛くて、グロテスクさもある描写の中、ほのぼのしました。春子ちゃんの成長が良くて、ラストシーンは美しかったです。これを3.11前に書かれたのがすごいな。2014/10/25