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内容説明
二〇〇二年に同和対策事業が終了した。しかし、それは部落差別がなくなったことを意味するわけではない。インターネット上には、どこが部落か、などといった情報が氾濫している。一方、差別を解消しようとする部落解放運動も時を経て、変化を余儀なくされている。「歴史」から学び、「メディア」によって現在を知り、「地域」から未来の方向性を模索する、これまでにない部落問題の決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
73
作者は、部落差別は「身体や民族や文化的差異」ではなく「差別されてきた歴史」により行われている不思議な営為だと指摘します。本書は明治からの部落史を追いながらなぜ部落差別が残ったのかを、また週刊誌報道等から差別・被差別者双方に未だマイナスの部落観が根付いていることを示し、その上で歴史を背負った上で”これから”を考える大阪・北芝の「差別されてもいい、一緒に考えてやっていける地域」を作る実験を提示することで、差別・被差別者を問わずこのような問題について当事者として考え続ける大切さが語られて大変示唆に富む本でした。2025/05/27
おいしゃん
29
いままで詳しく接したことも考えたこともないテーマだったので新鮮。第二章で人が変わったように、橋下知事を非難するジャーナリストへの非難を書き連ねていたのが印象的。2021/11/19
だいだい(橙)
26
被差別部落は、差別する側が作るものだ。例えば女性は女性差別がなくても女性だし、人種差別がなくても人種の差はあるが、こと部落差別に関しては区別する方法が差別するかしないかなのだ。部落差別が関西の問題と捉えられがちなのは関西に差別が残っているからで、江戸時代に徳川により作られた被差別部落は、関東ではほとんど誰も気にしないうちに消えている。著者は最近のネットで部落の地図などを広める風潮を憂い、隠さないで自発的に解放運動を進める方向を指示しているようだ。でも、差別する側が変わらないと何も変わらないのだよなあ。2016/10/03
浅香山三郎
21
職場の研修で紹介されてゐたので読む。部落解放運動の特色と歴史(1章)、『週刊朝日』の橋下氏を巡る報道のあり方(2章)、映画「にくのひと」公開を巡る経緯(3章)、被差別部落自身の取り組みのレポート(4・5章)からなり、部落差別問題を取り巻く状況の全体像を丁寧に紹介する。どうしても肚を割つてといふカタチにはなりにくい差別の問題を当事者の側から見て、運動の反省や、運動の現状(行政依存からの自立と地区のまちづくり運動)についてもカバーし、今後のひらかれた運動の可能性も示してゐる点も興味深い。2020/03/02
Mark
18
人とはこのように恐ろしい人格を持つ動物なのだとあらためて感じる。そういう私自身も多分心のどこかに持っているんだろうと思う。人の本質なのか、いや違うと信じたい。2021/12/07