内容説明
下咽頭癌で声を失った「私」はある日、炎天下の路上で『歎異鈔』の一節「地獄は一定……」が耳の奥に響くのを聞いた。これを機に、仏教近代化の旗頭だった破格の念仏僧・暁烏敏の著書に接し、たちまち魅了される。ところが、発声教室で知り合った同病の湯浅よね子は、暁烏を称える「私」との筆談に、なぜか顔を曇らせて……。著者自らの苛烈な闘病を通して問う、信仰の赤裸々な姿。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
18
読めてよかったと僕は感じているけど、暁烏敏に興味を持たない人は決して手にしないだろう暁烏マニアックスな小説。歎異抄を普及した最大の功労者・暁烏敏が、エノン氏とは比べようもないくらいの「ゲス野郎」として描かれていく。物語は、咽頭がんで声を失った主人公が歎異抄を語る暁烏に惹かれていくといった私小説仕立て。強烈な印象を残すのは、同じく声を失った女性の登場で、彼女は暁烏の「異端的発言」「不倫スキャンダル」「戦時翼賛体制への協力」をコレデモカ!と批判する。資料引用多数で、小説というよか暁烏敏研究に最適な一冊かと。2016/08/18
紫苑
0
仏教については完全に無知だが、ミッションスクール出身なので、浄土真宗がキリスト教と類似していることから、一種の宗教論として興味深く読んだ。特に異端として糾弾された他力の捉え方、異教徒も本願力の裡にあるという考え方にはある種の共感を覚えた。破戒僧のごとき生き方を自分ごととして捉える「私」と、激しく批判するよね子。自分もまた悪人(=畜生、強弱互いに危害を加え、安らがない存在)であると思い至ったとき、残んの生をどう生きるか、それぞれの道の選び方にも人のありようを見る思いだった。2021/10/12
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