内容説明
都会暮らしからレイドバックして、大阪西北端の山林に暮らす竜門卓。彼の生業は行方不明になった猟犬を探すことだった。そんな彼のところへ失踪した盲導犬の行方を突き止める仕事が舞い込んだ。目の不自由な少女にとって唯一の心の支えだった犬だ……。感動的なラストシーンが用意された表題作ほか、「焚火」「花見川の要塞」「麦畑のミッション」「終着駅」の“男の贈りもの”をテーマにした5編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@一箱古本市5/5
54
再読。5編の短編集。背中が丸まってしまった時は稲見一良ですわ。「セント・メリーのリボン」は秀逸だし中でも「花見川の要塞」のような過去と繋がってしまうような物語も良いわ。ひとつ筋の通った男たちを病に侵されながらも残したかったのでしょう。2021/12/05
カムイ
52
稲見一良氏の作品はカムイにとっては特別である。ハードボイルド作品がメインですが男の童話としても読めてしまう、一話一話は短い物語で登場人物の詳細を明らかにしない、その後の物語は読者にゆだねている、表題作の【セント・メリーのリボン】は大切なものが帰ってくるのはその人の人生を生き返らせてくれているクリスマスのプレゼント🎁みたいなものである。稲見氏は生涯に八冊の本を出しているが癌を発症したので心半ばで他界してしまう、もっと竜門とジョーの物語を紡いでほしかった。2021/09/05
yumiha
45
『猟犬探偵』の「サイドキック」の章で、まるで既出の人物のような描写に、前巻があるのでは?と考えて他の方のレビューから本書にたどり着いた。表題作には、竜門もジョーも、金桂花も大須賀リチャードも川谷軍三とハナも、詳しい。特にリチャードと盲導犬の太郎がよかった。「人は犬の命の輝きと避け難い終焉を、自分の人生に照射しつつ暮らす」ちゅうリチャードの言葉に、犬だけではなく、先に逝った大切な人たちの姿を重ねて読んだ。さすがアルコール依存症を太郎と共に克服したリチャードだ!一貫して筋を通しつつ含羞を秘めた男たちが魅力的。2024/10/25
背番号10@せばてん。
35
【1993_日本冒険小説協会大賞 最優秀短編賞】1996年2月13日読了。自分はこの新潮文庫で読みましたが、読メでは光文社文庫が圧倒。『登録は自分が読了した版を…』という、マイルール破りの誘惑にかられます。(2019年12月14日入力)1996/02/13
KEI
35
5編の短編、5人の男の物語。著者の本は「ダック・コール」2に次いで2冊目なのですが、登場する男たちに魅了されます。タフ、機転が利く、それでいて優しさを備え合わせ、料理も上手そう!同性から見ても惚れ惚れする事でしょう。無駄をそぎ落とした文章、野鳥をはじめ自然の描写からも「大人の男の目線」を感じます。「焚火」の老人は何者?「花見川の要塞」は時間を超えたメルヘン、「終着駅」では消えゆく赤帽さんの姿と、一瞬の賭けが、「セント・メリーのリボン」はタイトルの意味が分かった時、登場人物の心が胸に沁みました。お薦め2017/05/04