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内容説明
若き旧制高校生の頃に太宰治を知った青年は、戦後一人の編集者として太宰と再会する。時代の脚光を浴び、破滅的な生活のただ中で生き急ぐように旺盛な創作活動を続けた末に、玉川上水への入水へと収斂してゆく晩年の太宰。その姿を柔らかな愛情と畏敬に満ちた目差しで見つめ続けた著者が、懐しい人を、懐しい日々を、数々のエピソードと共に生々しく甦らせる、〈わが青春の太宰治〉。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まゆまゆ
18
晩年の太宰のそばにいた編集者、野原一夫によるノンフィクションの小説…のようなもの。やはり、世間的なイメージとは全然違う人柄だった太宰さん。酔っぱらわないと恥ずかしくてまともに人と話せないからお客さんが来れば昼間からでもお酒を飲んだとか、その全てとはいかないまでも色々なエピソードを書いてくれていて、「1人の人間としての太宰治」を感じることが出来ました。友人とのエピソードだけでなく、太田静子さんと山崎富栄さんとのエピソードも。生々しかった。野原さん、太宰さんと頻繁に呑んでたんだ…めちゃめちゃ羨ましい✨2016/04/03
Yuichiro Komiya
15
太宰治と親しくしていた編集者でお弟子さんだった著者による回想録。太宰治の人当たりよく、時に激しい人となりが書かれている。若い人達と集まって文壇の話をしながら酒盛りしたり、なくなる前の様子や、遺体を引き上げた時の様子なども。 若い三島由紀夫が太宰と会った時の話もある。2018/03/11
東京湾
13
戦前は学生として師事、戦後は編集者として従事した著者による、文豪・太宰治の生きた日々を描く回想録。太宰の過剰なまでのサーヴィス精神がここでは浮き彫りとなっており、その人柄に魅せられた青年の思いに共感し、また同時にその弱さへの愁いが胸を打つ。太宰をめぐる様々な交友関係・逸話について掘り下げられる他、太宰文学の背景にも迫ることのでき、また戦後の文壇事情についても編集者の視点から記録され、資料としても価値のある一冊となっている。心中に至るまでを読み終えた後、巻頭のバーで撮られた写真を見返し、何か切なくなった。2019/11/20
佑依-Yui-
5
太宰の世間的なイメージを打破する道具としては充分な一冊だ。深い親交があったからこそ描けるユニークな面も多く、流石の記憶力と表現力で、太宰が本の中で活動している。玉川上水で遺体が引き揚げられた日の貴重な記述はとても生々しく、読み終わってからは暫く呆然としてしまった。太宰の遺体は美しい物だったと、勝手に信じ込んでいたからだ。口から言葉が滑り出す口述筆記の様子には感動。哀しい天才…。2015/09/10
かみしの
5
ずっと探していた一冊で、偶然古本屋で出会い、購入しました。太宰治の“右大臣”ノッパラこと野原氏による回顧録。小山清、山岸外史、坂口安吾、太田静子…と聞き覚えのある人たちが次々と登場し、三島由紀夫との有名なエピソードを含む逸話や、太宰との邂逅から別れまでが飾らない文体で書かれており、ドキュメンタリーであるにもかかわらず、どこか歴史小説のように感じてしまいました。或いは、心づくしに満ちた小説なのかもしれません。かなり“生”の太宰に近付けた気がすると同時に、もう一生会えないという悲しみが2012/04/19