内容説明
田中金脈追及のさなかにガンに冒され、わずか半年後、38歳の若さで世を去ったルポライター児玉隆也。田中退陣の導火線となった「淋しき越山会の女王」、水俣病裁判の根源を企業の成立過程にまでさかのぼって探った「チッソだけが、なぜ」をはじめ、児玉が地を這うような取材と、無名の人々への温かい眼差しとを武器に書き残した、数々のルポルタージュから珠玉の9編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
15
圧倒的良書。38歳で夭折したジャーナリストがたった二年間に調べ上げた記事たち9篇。昭和40年代後半から振り返って30年といえば開戦から総力戦の破綻、戦後政治の揺籃期、田中角栄の栄達まで含む。日本人にとっては目の回るような激動であっただろう。徹底した取材は庶民の呟きを逃さず捕捉する。青年ジャーナリストの良心が静かに燃える文体が感動を惹起する。本書白眉は「司王国」のルポである。これだけ発達したweb世界に資料がほとんど見当たらない、敗戦直後に咲いた闇米調達部隊による小帝国について。読友さん諸氏に強推薦。2020/05/11
ポルポ・ウィズ・バナナ
3
今目の前にある「歴史」はじつは変遷を経た結果のもので、つまり、この本が書かれた45年前には別の歴史が存在していた(現上皇の当時の評価は全く未知のものだ)。一方、世代的に当時の残滓を感じ取れる部分もあるのだが、もう少し若い人になると地続きのものとして感じられんのかもしれないなあなんて思った。「学徒出陣後三十年」を読んだ時に感じる距離感、上手く言語化できんのだが、もしかしたら、今の人のほうがフィクションとして近い距離で向き合うことができるような気がしたり。なんていえばいいんだろう。2020/06/10
ぼっせぃー
3
沢木耕太郎あたりがお手本にしたのではなかっただろうか。題材の取り上げ方と拡げ方だけでもう十二分に読ませる。「司王国」「靖國神社国家護持法」「チッソ“朝鮮組”」。戦後も、靖國法案も、水俣病も、今に続く議論の中にこれらのワードは中々出てこない。こんな労作ですらいとも簡単に忘れられてしまう。2020/03/01
seichan
2
念入りな取材に裏打ちされた文章は、粘りがあって、明晰なのに読みにくい。不思議だ。この何ともいえない粘りはたぶん、人を調子に乗って切りつけるトップ屋的な心性とは違う、人の弱き心ゆえのつぶやきへの共振と(私にはその根は知れないが)忸怩たる思いとが、為せるものだと思う。時代を映すはずのルポなのに、その時代を生きた人の心性のほうが、伝わってくる。この人のバックボーンを知らないまま、もう少し作品を読んでみたい。2012/05/27
丰
0
Y-202003/10/09
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