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内容説明
姪との「不倫」に苦悩した島崎藤村は、逃げるようにしてフランスへ渡った。折しも勃発した第一次世界大戦に濃く色どられた約三年間のパリ生活で、藤村は何を観、何を聴き、どんな事態を体験したのか? 下宿の女主人との関係は? 河上肇や藤田嗣治ら、パリの日本人たちとの交友は? 人間への好奇心、その飽くなき情熱が生き生きと蘇えらせる、藤村の歩いたパリ。読売文学賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
87
姪との不倫に悩み、逃げるようにパリへ渡った島崎藤村。そのゴシップについてはほとんど触れる事はなく、約3年間、藤村がパリでどんな風に過ごしたかを藤村自身の紀行風小説「エトランゼ」や様々な文献から探ったもの。パリ滞在中に第一次世界大戦が勃発し、疎開したりもするし、教科書なんかでしか見た事がない画家や音楽家が生き生きと活動していたり、あの当時のフランスの雰囲気がとても良く分かる。戦時のパリの様子はコロナ禍の今にも通ずるところもある。海外で暮らす日本人の気持ちは今も昔も変わらない。とても共感した。2020/06/17
元気伊勢子
9
島崎藤村のパリでの生活がどんなものだったか気になり読んだ。藤村は、スキャンダルからの逃避という理由からパリ留学をした。3年かけて自分の心が整理できたのは、本人的には良かったのかもしれないが、どうだろう。大正時代の価値観を現代の価値観で、あれこれ言うのも違うし。2021/04/01
方々亭
4
島崎藤村が日本を逃れるようにしてパリへ渡って過ごした約三年の状況を、丹念に調べて纏めた作品。あたった文献もかなりの数になるようだし、現地に赴いて縁の人たちに話も聞いている。とても作者晩年の作品とは思えないほどのエネルギーと執念を感じる。2021/03/22
takao
3
ふみ2024/04/11
Yukiko
2
1913年、1914年、1915年。第一次世界大戦勃発の年を挟んだ3年間の籐村のパリ滞在の生活をたどった日誌のような印象の文章。読み始めると、その引用の多いゆったりしたスタイルにびっくりする。90才近い大家になると、こんな文体で自然に書けるのかと思う。 1910年代半ばのヨーロッパと大正時代初めの日本が、島崎籐村を介して結ばれて、同時代だったことが実感できる。パリについてまもなくバレエ・リュスを見に行ったところなど興味深い。大戦が始まると女性たちが男性の仕事を代替し社会に出て行く様子も面白い。 籐村は昭2014/07/24