内容説明
何かしろ、何ができる? ――愛着ある街の悲報に接して、作家は現地に駆け付けた。バイクに跨がり、水、下着、化粧品などを直接手渡す。そして見えてきたのは、マスコミや企業の偽善、被災者の心を汲みとれない知事や市長の体温の低さだった。その後もテント村や仮設住宅に通い続けて、何ひとつ震災前と変わらぬまま封印されてゆく現代日本の病巣までを焙り出し、作家から長野県知事へ転身させた根本的動機となる経験の、渾身のレポート。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリータ
9
◆阪神大震災の被災地での物資配給のボランティアに基づくルポ。'95年2月~'97年1月の『週刊SPA!』等の連載(一部書き下ろし)、'96年新潮社刊、'97年文庫刊。『日刊スポーツ』連載の「ゲンチャリにまたがって」は読み応えあり。◆大阪から原付で被災地入りし、個人宅や風呂を回って話を聞きながら、自ら仕入れた生活必需品を配布するスタイル。女性関係や創作を通じて土地勘があればこそだとは思うが、マスコミの集中した地点のみならず細かく移動し観察していることが伺える(阪神間で生まれ育ったものとして、違和感はない)。2022/01/10
スプリント
8
読了後、阪神・淡路大震災の重すぎる教訓は東日本大震災に活かされたのだろうかと深く考えさせられました。一般庶民と企業とマスコミの限界と可能性がこの本には書かれています。著者の普段の言動は共感できるとは言いがたいですがこの本に書かれていることは共感できる点が多いです。2015/10/02
bouhito
7
ゲンチャリで震災直後の神戸の街の風と匂いを感じた記録という点では、非常に有意義なものだと思う。そして行政やマスコミに対する批判もある程度的を射ている。ただそれ以上に本作は、田中康夫が女々しくて、言い訳じみていて、正義漢ぶっていて、勝てる相手に勝てる話題で批判を加える素晴らしい大作家であることの克明な記録でもある。特に前半部は、おっさんの女性関係にも夜の生活にも興味ないわ!妻夫木聡が書いてるなら別だけど…。が、本来、記録文学とはボロクソに言われてようやっと価値が磨かれてくるものなのかもしれない。2015/12/16
hideiz
6
田中康夫氏が神戸で一人赤十字と称したボランティアをしていたことを、地元民なのにまったく知らなかった。作者のマスコミ批判には共感する。あの数日間頭の上を無意味に飛び回っていたマスコミのヘリには憎しみ以外覚えなかった。それにしても田中さんは「なんクリ」の頃と変わらないね~。女性関係を誇示したり、支援を求める企業も日航・ベネトン・ランコム・シャネルとか。苦笑しつつ読むと、最後のほうで「自分は神戸に似ている」と主張しだして、むむ~? けど神戸に住んで二十数年、神戸って外見と中身が違うよね、とは実感するw2016/01/16
はち
6
言いたいことはわかるし素晴らしいことなんだけどとにかく読みにくかった。公の復興も私の復興も共にだいじ。果たして東日本大震災ではこの教訓は生かされたのだろうか。2013/06/08