内容説明
紋章上絵師の章次のもとに、かつて心を寄せあっていた女性から、二十年前と同じ蔭桔梗の紋入れの依頼があった。あの時は事情があって下職に回してしまったのだが、それは彼女が密かな願いをかけて託した紋入れだった……。微妙な愛のすれ違いを描き直木賞受賞作となった表題作はじめ、下町の職人世界と大人の男女の機微を、しっとりと描いた十一編の物語を収録する、珠玉の短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
127
第103回(平成2年度上半期) 直木賞受賞。 昔ながらの人情味溢れる 短編集。この手の本を 読むとなぜか心優しく なれる気がする。 ささいなエピソードを さりげなく語りながら、 その人の人生を描く。 登場人物の心根が 奥ゆかしいのは著者の 好みなのだろうか。 ひどく控えめな立ち位置が 好感を覚える。 職人を主人公に据え、 日本の伝統芸と変遷と ともに、過ぎ去った日々を 情感を込めて描く…そんな 短編集だった。2014/01/01
雪風のねこ@(=´ω`=)
115
義母殿推書。いやぁ絶品ですね。呉服悉皆といういわば時代に取り残され消えゆく産業に人生の往時を隠喩し、呉服や生地を女に、紋章上絵師や染抜屋を男に喩えて構成を組むという手法と、加えて存在感のある当時の生活模様の描写が合わさってそれはもう素晴らしい短編集。服は着ている内に汚れるがそれを後悔と。丁寧にシミを抜き汚れを落とす事を、その後悔を消すという隠喩なのである。ミステリ調の竜田川が良かった。とはいえ全編素敵なので一冊は手元に置いておきたい。2018/08/15
kaoru
36
大人の恋愛を描いた短編集。すれ違いがテーマになっていて、涙が止まらないといった劇的な物語はありませんが、じんわりと胸に染み入る読後感です。紋章上絵師など今では失われかけている、呉服関係の仕事が描かれているのも見所。2017/08/29
カピバラ
34
図書館で閉架になっていて、取り寄せると、「現代の小説1988」という本がやって来ました。その中に収録されていて、読んでみると丁寧な文体で、しっとりと読めました。職人の姿は、ひたむきで素敵です。2015/09/18
Tetchy
26
追悼泡坂妻夫氏。率直な感想を云わせてもらえば全てが一級品の短編集だ。自伝的な短編、「増山雁金」、「簪」、「弱竹さんの字」。ラストに不意を打たれた「遺影」、大人の恋愛を感じさせる表題作や「絹針」、それに加えて自分なりのベストの二作品「くれまどう」と「色揚げ」。戦慄のラストの「竜田川」。寂寥感漂う「校舎惜別」に微笑ましい「十一月五日」。本統に素晴らしかった。2009/02/26
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