内容説明
平穏な日常生活にふとよぎる狂気の影……。大企業の課長代理、テレビ・ディレクター、大学教師など、失われた青春の癒しがたい傷を抱きつつ、現代の第一線で活動する知識人たちが、あることをきっかけとして突如、情念の押えがたい噴出に襲われる。狂気の世界へとつき進んでいく彼等のありさまを通して、捉えどころのない現代の生に、鮮明な光をあてようとする意欲的連作小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yu。
22
傍から見ると満ち足りた生活を送っている様に思えてもその内側は絶えず曇っている‥ そんな彼らの内に棲むくすみの起因を過去に遡って掘り下げていく苦く重たい人生劇場。。四編どれもが良かったですが、結婚を間近に控えたある日突然行方を晦まし、次に会った時には人間性が180度変わってしまった元部下の姿を見つめる主人公の心境が覗ける「彼方の声」は特に印象深い。2018/04/18
501
15
過去の記憶が心の隅に眠っていた記憶を呼び覚まし、それは不可逆的に膨張し現在の自分を飲み込んでいく。理性的に捉える自分の人生はうまくいっているはずでありながら、そのきっかけは鳥の影のように唐突にかすめ、無意識に刻み込みやがては表象する。鳥の影が横切った男の4編の短編集。仕事に疲弊した神経には辛かったが、逆にカタルシスがあった。2016/11/12
OHNO Hiroshi
3
「食堂の話」は二、三度繰り返し読んだ。手紙が出てくるのは、夏目漱石「こころ」のように、作者の得意とするところか。2016/12/26
調“本”薬局問悶堂
2
口癖というか書き癖?に気付く。 短篇で読んで初めて、柴田翔という作家が少し分かった。そして、少し共感出来た。 面白いとも思った。私の人生の目標は……? 《2020年7月 登録》 “自分の正しさというのは、疑いのないことであった。 時折、自分が悪いことをすることはあっても、その時でも、何が良く何が悪いかは、明確であった。 その明確さこそが、世界のすべてを支えていた。”2011/07/23
ステビア
2
いつもの柴田翔でしたョ。2013/07/24