内容説明
光が逝き、影は動く。愛が滅ぶとき死者は扉を叩く……。戦中・戦後、私たちは絶え間なく死に、絶え間なく生きた。そして現在――この平穏で欺瞞的な日々がある。だが、そこには、生きられなかった過去が、層をなして張りついている。男女の別れの場に、都会の賑わいに、失われた時と空間を招き寄せ、現実と非現実を二重写しにしながら、未生の現在を照らし出す、柴田翔の新境地。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅんしゅん
7
戦後、復興しながら繁栄の道へと向かう中で、過去と現在を結びつける結び目を見失わず模索するような連作小説。それぞれの断片が無関連と思われるエピソードの中から、共同体が全体的に落としてしまった過去と現在の流れの中を、途方に暮れながらも泳ぎ切ろうとするような実験的な手法を感じた。時間、空間それぞれの中で、繋がっているはずなのにどこか馴染むことができないでいる過去と現在。生きているはずなのに生きられなかった過去、生きているはずなのに死んだような現在、都会の中で乱反射する現実と非現実の白昼夢を目を凝らして見ている。2021/10/16
グッチー
0
過ぎゆく人生に対する無常、幸福。為すすべなく「戦中・戦後の復興期」を生きる人々を鮮やかに描き出す。2018/12/16
羊男
0
★★★1982/06/12