新潮文庫<br> 紬の里

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新潮文庫
紬の里

  • 著者名:立原正秋【著】
  • 価格 ¥440(本体¥400)
  • 新潮社(2016/06発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101095042

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内容説明

紬と絣の研究をしている高階は、越後に旅して志保子を知った。夫に死別し、ひとり娘を育てながら、雪に埋もれてひっそり塩沢紬を織る志保子。しかし二人の愛は辛夷の花が散るように、もろくも崩れてゆく……。微妙にかみあわなくなる女の情念と男のエゴイズム。その心理の揺れを、落日の雪山に、また雪どけ水を運ぶ魚野川の冷たい流れに映して、鮮烈な抒情をかもしだす長編ロマン。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

じいじ

90
立原小説のマイ・ベストは『花のいのち』だったが、10冊目の『紬の里』は、優劣つけられないほど面白かった。夫を谷川岳の転落事故で失った妻・志保子に6年ぶりに訪れた熱い恋。仕事の紬織が縁で生まれた、染色・織物研究家との恋。出会いから結ばれるまで四年も要した、まだるっこいオトナ恋である。夜具が濡れるほど烈しい夢を見ることもある、志保子の純真な姿に魅かれます。この小説、男の立場に立ってみると、少しばかり男の本能の赴くまま過ぎて、男のエゴが見え見えである。男と女の心に秘めた感情を、優美に繊細に描いた秀作だと思う。2021/10/07

新地学@児童書病発動中

87
雪国を舞台にした恋愛小説。紬の研究をしている高階は、塩沢紬を織ることを仕事にしている女性志保子と結ばれる。妻との仲が決定的に壊れた時に、高階は志保子がいる新潟に移り住むのだが……。この小説には、散文的なところと詩的なところがあり、散文的な部分は共感できなかった。高階は志保子がいるのに、芸者の織江とも深い仲になってしまう。散文的な部分はどうしようもない男の性を描いていると言えるかもしれない。詩的な部分は雪国と塩沢紬の描写で、溜息が出るほど美しく感じた。男女のどろどろした関係が醜くなればなるほど、(続きます)2018/07/12

nakanaka

74
未亡人で機織り職人の志保子と妻子持ちで織物の研究家の高階の不倫話。当然ながら高階の妻が割って入ってきますし、芸者の織江も高階と関係を持つというグダグダな展開。高階はなんて男なんだと憤ってしまいそうですがどういうわけかそんなことはありませんでした。志保子の嫉妬に焦りつつも更に織江との関係を楽しむ高階の潔さは爽快感すら感じさせました。人物描写が秀逸でそれぞれの登場人物がとても魅力的でした。特に女性の色気を表現するのに長けた作家だと感じました。純文学といえる作品で面白かったです。2017/03/11

yasumiha

6
雪国の女性として一途に情熱を燃やす志保子と、志保子の想いを危ないと思いながらも、男性の本能を純粋に立ち振る舞う高階。女性心の抒情、情景描写の美しさは立原正秋氏ならではであり、心地好い読後感であった。後半の二人での京都化野から祗王寺、神護寺への旅での紅葉の描写は、素晴らしく優美であり、うっとりしてしまうほどである。一貫して美的意識が根底にある立原文学は好きだ。2021/11/08

 本の紙魚

3
作者が中世に魅せられていたと解説にあったとおり、「とわずがたり」を思い出す男女の情愛のドロドロ感。着物の話に惹かれて読んだので色々な紬や織物の話は面白かった。今は超高級品になった苧麻織りにも触れている。男もその妻も主人公も芸者も誰一人お金には困っていなくて自由に使える時間が結構あって、子どもは居ても恋愛や同居別居外泊の邪魔にはなぜかならなくて、そもそも家事はお手伝いさんがやったり外食したり…ってやっぱり宮廷文学に憧れていたのだろうな。浮気を咎められても完璧に否定しきる男のメンタルの強さは何というべきか…。2022/01/25

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