内容説明
将軍・足利義満の威光の影として、見られる側の人間に徹し続け、そうすることで能を大成させた天才・世阿彌の半生を通し、自己が自己を獲得していく内面のドラマを見事に定着させた、戦後戯曲の最高達成を示す作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
38
闇は光になることはあっても、影が光になることはない。老婆の予言はシェイクスピアから引かれているようだ。世阿弥の生涯が惹かれるといったのは源氏物語からの連想だったことを、本作を通じて言語化されたことで思い当たる。能を守るために政治から距離をとる。そのためならば政治的に動き、人を裏切り、人間性も捨て、家族とも疎遠になる。最後に政治的に切り捨てられるが、世阿弥は『風姿花伝』に罠を、呪いを仕掛けたと嘯く。2022/11/16
Haruka Fukuhara
8
自分にはちょっと難しかった。感じる前に考えてしまって何だか世界に入り込めませんでした。たしかこれ若い頃に書いた代表作だったような。早熟の天才だったのかな2017/06/12
舟江
4
短編ではあるが、無駄がなく非常によくまとめられており、そして、ほどほどの余韻もあり、噛むほどに味わえるスルメのような作品だった。2022/01/15
まっちゃちゃん
1
表題作の「世阿彌」と「野望と夏草」の二編の戯曲を収録。どちらも故・山崎正和先生の代表作。「世阿彌」は1963年初演、第9回新劇岸田戯曲賞受賞作。 足利義満と世阿彌との関係に中心を置いた「世阿彌」。1970年初演、後白河法皇と平清盛の関係を主に描いた「野望と夏草」。 つい先日亡くなられた山崎正和先生に対して失礼極まりますが、両作品とも抜群に面白い。これほど濃い、深い人間劇を、最近とんと見かけない。ぜひ、野田さん、やってくれないかなぁ。2020/08/27
千本通り
1
「世阿弥」と「野望と夏草」の2編が載っている。「世阿弥」は足利義満の影として生きた世阿弥の生きざまを、「野望と夏草」は後白河法皇と平清盛、藤原信西らの野望を描く。戯曲は読み慣れていないとなかなか難しい。2020/08/25