内容説明
日本の社会と知識人の心を激しくゆさぶらずにはおかなかった、昭和初期のマルキシズム。その嵐の中を手さぐりでさまよう若い魂の群れ。美しい近代女性・曽根真知子は、退屈で滑稽な自分の親類仲間の俗物性を批判し、現実社会を動かしている力に虚偽を感じて、社会の救済を思念する。甘美なヒューマニズムを脱却して真摯な生き方をもとめる真知子の愛と思想を描く、記念碑的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
T. Tokunaga
3
「良心的知識人女性の読むような」というステレオタイプを利用しなければ、1930年前後の日本の文壇では、女性は私小説ならざる長編小説など書けなかったのだろうか。作り物としての小説が日本の女性作家に少なかったから、ミステリーも書けるような有吉佐和子と曽野綾子が出てきて嫉妬されたのもわかる。ただ、わかりやすいロマンス小説(暴行未遂やモルヒネ中毒の地主まで含む)に共産主義という思想を接ぎ木するというこの擬態はあまりに苦しい。2025/06/17
Hiro
1
昨夜急に手に取って読み出し一気読みした。言い回しや表現が古風でやや読みにくい文章だったが、風俗小説としてなかなか読み応えがあった。トルストイのようでもありオースティンようでもあり細雪にも似ている。昭和初年の裕福な家庭の女性の結婚物語なのだがそこに女性の自立と当時流行の社会主義運動との関係が味付けされている。主に二人の男との間で揺れる主人公真知子の姿が描かれる。ラスト百ページはその展開にハラハラしてしまった。また母親や親類、友人等女性たちの卑俗で活き活きした生活感あふれる描写も充分面白かった。2019/01/08
masayukimi
0
1986年9月読了
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