内容説明
私が見たり聞いたりしているこれは、本当に世界そのものなのだろうか。かつては誰も見通すことができなかった、知覚し感覚するという経験を解き明かす、思考のドキュメント。著者は、こうして、ついに世界と心ある他者に出会えた!
目次
はじめに
I 問題
1 漠然とした問題
2 素朴実在論の困難
3 二元論の困難
4 一元論の困難
5 他人の心という難問
II 理論
6 知覚の眺望構造
7 感覚の眺望構造
8 知覚的眺望と感覚的眺望
9 相貌と物語
III 解答
10 素朴実在論への還帰
11 脳神話との訣別
12 他我問題への解答
結び
注
謝辞
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
35
読了に6日かかりました。無視点的・有視点的な「眺望」という考えを使って、絶対的と思われた他我問題の「壁」を取り払った快著。以前読んだ、中村秀吉「パラドックス」の最終章の議論を連想したおかげで、なんとか理論の部分についていけました。むずかしければ、そちらを先に読むと役立つかも。「他者の心」を公共的・日常的な空間に返して、開放したような明るさを感じました。読者を決して置いていかない懇切丁寧な説明が良かった。2016/07/29
izw
16
心、意識、知覚、感覚の問題について一歩一歩緻密に議論を積み上げている。哲学的議論を展開する本は滅多に読まないが、これまで読んだ中で最も論理展開が分かりやすい本だった。「はじめに」に「哲学用語も哲学の学説も何ひとつ知らなくとも、私とともに進んでいけるはずである」を書いている通り、素人でも読みとおすことができた。ただ、9章「相貌の諸相」はそれまで丁寧に進めてきた議論が雑になった(あるいは、読者に対する配慮が少なくなった(普通になった?))気がしたのと、11章「脳神話との訣別」はちょっといただけない。2016/09/05
izw
8
最初に読んでから3年目にして再読した。以前議論が雑だ、という感想をもって、よく分からなかった「9章「相貌の諸相」についてもそんなに違和感なく議論についていくことができた。その上で、やはり11章「脳神話との訣別」で展開されている脳という物理的存在が意識・心を生じさせるのは幻想である、という主張には疑問を感じる。2019/07/14
yutayonemoto
6
30分でざっと内容を確認した。余裕のある時に読み解くことも必要かと思う。普段考えていることとは少し違う。非常に丁寧な論考なので、論の組立自体が参考になると思う。2016/08/28
kousan
4
読むのに1年程度かかった。独我論では、前に進めない。眺望論と相貌論を取り上げ、役に立つ哲学が必要であると考えた方が有益ですね。2019/09/24