内容説明
十年余り前。じめじめと蒸し暑く、金も当てもないまま夜な夜なK町を冷やかし歩いていた私の心にも、カビならぬいつも以上にしみったれたものが巣くいはじめた梅雨間近のころである――。その鰻屋を見つけたのは、裏通りのディープな一角だった。〈鰻を食べると。一・元気になります。二・若返ります。三・セックスが強くなります。四・死人がよみがえります。〉カレンダーの裏紙にマジックで書いたような稚拙な張り紙には、確かにそうあった。曇りガラスはいつも閉ざされて出入りする客もなく、鰻の匂いすら漂ってこないその店の奥で、いったい何が調理されているのか? 好奇心の虜となった私はある日、ついに意を決して暖簾を潜った…。
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