内容説明
音楽に天賦の才を持ち、「トルコ行進曲」、オペラ「フィガロの結婚」、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」など、心に残る数々の名曲を生み出したモーツァルト。父親とともにヨーロッパの宮廷を歴訪し、喝采と称賛を浴びた神童時代から、病と困窮のうちに死を迎えた不遇の晩年まで――豊富な資料と綿密な現地取材で描く、作曲家の波瀾の生涯。『モーツァルト―美しき光と影―』改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
91
音楽史に名を連ねてきた名作曲家は数いれど、モーツァルトには特別な思い入れがあります。モーツァルトの生涯を丁寧に紡いできたこの著書は物語性が強く面白かったです。天才的な音楽の才能を持ち、宮廷訪問で喝采と賞賛を浴び、神童とも呼ばれていたのにも関わらず、成人してからは困窮の生活を迫られ、やがては謎の病で命を落とすその生涯は、人の手を借りでもしない限り、世渡り下手だったことを語っていると思いました。不出世の天才は不遇の中でその命を終わらせたと言えるでしょう。運命のいたずらを感じずにはいられません。2016/09/06
mawaji
7
音楽の才能はあっても生活力や経済観念に欠ける息子の欠点を危惧していた通り、レオポルトに死なれてヴォルフィーが凋落していく様子はブライアン・エプスタイン亡き後アップル・コアを起こして取り巻きの有象無象から集られて経済的に破綻するビートルズを見るようです。それでもプフベルクに無心する手紙を書く同じペンで三大交響曲を生み出すのが天才たる所以かと思われます。演奏するのも無心でなくてはならないのですね。「最高の技術を要する音楽でも、人にそれを感じさせてはいけない。音楽はわかりやすく、耳に快くひびかなくてはいけない」2016/09/07
ハル
6
数えきれない名曲を生み出したモーツアルトの生涯を細かく描いているが、手紙などの資料を基にしていると思われる個所が多く、面白い。レコードの発明や大衆向けの音楽になるまで、音楽家は宮廷に仕えてもらわなければ生きていけなかった。アスペルガーでADHDだったのでは?と言われる不世出の天才は、世渡り下手だったのは確かなよう。世界三大悪妻の一人を伴侶とし、最期は不遇のままに生涯を終えるとは可哀そう。他の作曲家の汚い楽譜と比べて、手直しがなく綺麗であり、頭で練られ完成したものを書き留めるだけだったと言われ、驚きである。2016/04/29
*takahiro✩
2
面白かった。作曲家の物語シリーズ。モーツァルトの本は相当数読んでるが、いつもの"何年にどの曲が作曲され…"というのではなく、本当に物語りだったので楽しく読めた。次のベートーベンも楽しみ。それにしてもコンスタンツェは憎たらしい。2016/03/30
かげ虫
2
「作曲家は霞を食って生きてるわけでも、常に霊感だの神の啓示だのに導かれて曲を書いているわけでもなくて、経済事情、社会事情、金回り、人間関係、家族関係、さまざまな俗世のごたごたに翻弄されながら仕事している」……というあたりまえの事実が、ちゃんとあたりまえのこととして平易に描かれている数少ない一般向けの音楽本。よく話題にのぼるベートーヴェンよりも、モーツァルトのほうがフリーランス作曲家としての苦労はずっと多く、その人生が短いだけにいっそう切実に胸に迫る。リブリオ出版の作曲家シリーズの改題。2016/02/20