内容説明
その食い意地こそが、最大の魅力。「料理は藝術。美食は思想」という哲学を生涯貫き、粋な江戸前料理からハイカラな洋食、京都の割烹、本場の中華まで、この世のうまいものを食べ尽くした谷崎潤一郎。「食魔」とも称された美食経験は数多の名作に昇華され、食を通して人間の業を描いた。「悪い女ほどよく食べる」「蒟蒻とサドマゾ」「東西味くらべ」など、斬新なアングルで新たな魅力を掘り起こす、かつてない谷崎潤一郎論!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
102
谷崎の食と色の芸術を突き詰めていて興味深かったです。私生活で料理と美食に芸術と思想を見出しているのが谷崎らしいところだと思いました。実際の食のみならず、作品とも絡めているからこそ見えてくる気質が面白かったです。食も谷崎にかかると耽美で官能に変化する。そこには食べることへの尽きない欲望があるからなのでしょうね。2016/07/26
青蓮
99
料理は藝術、美食は思想ーー食へのこだわりは尋常ではない「食魔」である谷崎潤一郎。お腹が膨れれば何でもいい私とはまるで正反対。彼は相当、舌が肥えてたようで、食糧難の戦時下でも食事は贅沢三昧。しかも食べっぷりも凄い。そんなに食べてたら、そりゃ体を壊すよねって言う程の健啖家ぶりには驚かされます。彼の作品に登場する料理も美味しそうで、読んでいて何だかお腹が空きました。しかし、彼の「食」は単に美味しい物に留まらず、不味い物にも及んでいて流石「食魔」だけあるなぁと妙に感心してしまいます。また谷崎文学も再読したいです。2016/09/02
つちのこ
35
本書を読み終えてから改めて嵐山光三郎著『文人悪食』の谷崎の項を読んでみた。というのは、本書にあった「谷崎はヌラヌラな食い物が好き」という記述がどうにも気になったからだ。コンニャクやトコロテン、バナナなどヌラヌラ、ドロドロしたものになぜ執着したのか。当時人気があった女優春川ますみのような豊満な女性の肉体賛美にもそれは連想されていく。著者の見解では食への異常な執着を谷崎のフェティシズム的な性的思考に結びつけているのも見逃せない。蛇足だがマゾヒズム画家の春川ナミオは、春川ますみを女王様のモチーフとして⇒2023/10/26
メタボン
32
☆☆☆☆ 谷崎の健啖家ぶりに感心することしきり。最後まで食いしん坊だったんだな。美食だけでなく、食のグロテスクな部分、エロティックな部分まで表現してしまう谷崎はやはり凄い。たん熊北店、瓢亭、鳥居本、本店浜作、楼外楼、飛雲、神戸のレストランハイウェイ、マルジュウのソーセージ、フロインドリーブのパン、憧れの名店にいつか行ってみたい。2022/05/13
那由多
19
食べることへの執着心が正に食魔。食生活、食の好み、食の記憶から、谷崎文学を紐解く。蒟蒻でエロスを刺激され、味噌汁の香りのゲップで興奮する。更に作品への昇華は、変態度マックスに爆上がり。やはり只者ではない。大谷崎と呼ばれるだけはある。太宰治と同じく、味の素党員だった事実を知り、チョコミン党な私はほっこりした。谷崎はあまり読んでないので、これをきっかけにたくさんの作品に触れていきたい。2020/08/31