内容説明
【フランス推理小説大賞813賞受賞】目覚めると、鎖をつけられ、地下室で監禁されていた――。ある事情から、人目を避けて南フランスの田舎の民宿に滞在していたテオは、周囲の山中を散策していたところ、廃屋めいた家に暮らす老兄弟によって囚われの身となってしまう。地下室の先住者リュックは、彼にこう告げる……「地獄にようこそ」。あらゆる農作業と重労働、家事に酷使され、食べ物もろくに与えられず、テオは心身ともに衰弱していく。ある日、老兄弟の隙をついて脱出を試みるが。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
96
現代社会においてこのようなことが現実に起こりうるのか?いいえ、現実問題として在ります!他国による拉致、日常に隣接した処での女性の監禁または児童虐待!作者のメッセージは明解で、作為的な導入部を過ぎてからはぐいぐいと物語に惹き付けられていく…人間がいかに利己的に振る舞える生き物か!共感を持たない者はただの怪物に過ぎないということを…。2016/06/22
GAKU
74
結構グロい系の小説や、悲惨系のノンフィクションは読み慣れている私ですが、これは読んでいてとてもいやーな気持ちになりました。中年男性のテオが田舎暮らしの老兄弟に監禁され、奴隷や家畜のように過酷な労働を強いられるというお話。囚われの身となったテオが肉体的にも精神的にも壊れていく様が、淡々と描かれています。それが逆にリアリティがありもう読みたくないという気持ちと、早く先が知りたいとい気持ちが交差。こんないやな小説は早く読み終えてしまおうと思い、結局はほぼ一気に読んでしまいました。何とも言えない読後感です。⇒2016/07/26
ゆかーん
69
何も救われない物語でした…。主人公のテオは、せっかく刑務所から出られたのに、廃墟に暮らす老兄弟に監禁されて拷問を受け続ける姿が哀れです。どうにか脱出を試みるも、別の仲間に捕まり、更なる拷問を受けるその場所は、まさに「地獄」という言葉が似合います。自分の辛い過去を悔い改めて出直そうと出所したのに、監禁されたことでその記憶から逃れられなくなってしまったテオ。16ヵ月間の拷問に耐え抜き、ようやく恋人と再会したものの、愛する気力を失ってしまった彼に残されたのは、小さなぬいぐるみのような傷ついた身体だけでした…。2017/02/16
のぶ
67
これは刺激的なある種のノワール小説では?この話もっと膨らませて長い作品にすれば、また別の物語として楽しめるだろう。それを一部だけ切り取ったかのように270ページ程度にまとめて、監禁する老兄弟と、監禁され奴隷として扱われる男の姿を突き詰めるシンプルな描き方で、人間の本性や生への執念が犯人、被害者ともに炙り出されているように感じる。一種の狂気の物語なのだろうし、描写だけを浮かべると目を背けたくなるような部分もあるが、人の一面を突き詰めた話として読めば成功しているし、いろいろと感じる所の多い作品だと思う。2016/08/19
annzuhime
54
島外の図書館から取り寄せ。これはミステリなのかと疑う。ミステリというよりもタイトル通りに、1人の男の手記なんだろう。監禁された男の手記。粛々と続く監禁と労働と暴力。絶望しかないその手記を読まされる。読まなくてはならない。ページを繰る手を止められなかった。1人の男の人生を垣間見た。2021/01/18