新潮文庫<br> 妖女のように

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新潮文庫
妖女のように

  • 著者名:倉橋由美子【著】
  • 価格 ¥550(本体¥500)
  • 新潮社(2016/06発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101113043

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内容説明

女の胎のかわりに、体内にことばを分泌する虚無の暗闇をもって小説を書く女、これが妖女です。――“女にして作家であること”の奇怪さを追求した表題作。結婚という茶番的儀式を、双生児KおよびLの濃密な近親相姦の愛のフィルターを通して描く「結婚」。結婚に巣くう不貞の精神を暴く「共棲」。欺瞞的現実世界にイロニイの矢をはなつ倉橋由美子の《反世界小説》三編を収める。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

158
表題作はタイトルからは妖艶な少女の物語を想像していたのだが、実は他の2篇と合わせて結婚をめぐる物語。巻頭の「妖女のように」は、私小説を装ったもので、これはまだリアリズム文学の範疇に属するが、次の「結婚」は、まさに制度と装置の解体を言葉によって構築したもの。さらに、最後の「共棲」にいたっては、カフカの『審判』を思わせるシュールで、寓話的な世界だ。ただし、カフカ的世界ほどには深刻でもなく、妙に明るいのだが。これらの物語群に見られるのは、結婚を軸とした「私」と世界との再構築を倉橋的な含羞で表現したものである。2014/11/19

東森久利斗

3
女の胎内で厳かに脈打つ鼓動、虚無の暗闇、男と女の儀式、不貞なパンドラの果実に蝕まれた虚構の現実世界をシニカルなフィルターを通して写しだす。記号と虚心へのネガポジ反転、自虐的論理による産物、寓話。妖しくシュールでヴィヴィッドな感性による幻惑、脆弱な精神のを痺れさせる。"あとがき”は、必読の価値あり。「結婚」がベスト。2023/12/20

調“本”薬局問悶堂

2
先日のお散歩の戦利品。 コツコツ集めている倉橋由美子。ほとんど入手不可だから。かなり蒐集できたはず。 今年の3月は読書がはかどる。なぜだろう。 「精神安定剤的読書」今はとにかく、電車での自分を落ち着けるために読む。みんなも本を読めば、きっともう少しイライラしなくてすむ。 “妖女”っていいな。 《2020年7月 登録》 「ぼくは女のひとのためにはうつくしいということばしか知らない」2011/03/18

nightU。U*)。o○O

2
「結婚」という関係性ならぬ、「契約」に纏わるごくごく私的な雑感集だと思った。著者の激越な私憤と、それを高みから見下ろして戯画化する作者としての嘲弄がある。弔いのイメージが見られ、随所に感傷的なものも感じる。「妖女のように」は良かった。しかしどれにも見られる、イメージの連続、乱発は本質から目を逸らせようとする目くらましなのではと思った。2015/12/31

あ げ こ

2
俗的なものの象徴とも言うべき存在=S、或いは、Sに備わる社会性というものに対する、無機質な眼差し。何か別の生き物を眺めているかのような、自分とはまるで無関係なものを見つめているかのような、熱のない、涼やかな瞳が、心を酷くざわつかせる。LやKと言った存在が、社会性というものに無関心な、ニュートラルな存在であるからこそ、Sに対する悪意はその純度を高められているように思う。冷淡さを失わない文体の中に光る、ドロドロと粘り付く女という性、小説を書く女であることの重さを描いた言葉の暗い輝きが、深い翳りを残す。2014/01/12

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