内容説明
ヒトの脳下垂体と睾丸を移植された犬が名前を欲し、女性を欲し、人権を求めて労働者階級と共鳴し、ブルジョワを震撼させる(「犬の心臓」)。繁殖力を高める生命光線を浴びて、大量発生したアナコンダが人々を食い荒らす(「運命の卵」)。奇想天外な空想科学的世界にソヴィエト体制への痛烈な批判を込めて発禁処分となった、20世紀ロシア語文学の傑作二編を新訳で収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
256
中編が2編。どちらもめちゃ変わった話で三谷幸喜のドタバタ喜劇のようだけどあまり明るさもなく、とことんそのご時世を皮肉ったりパロったり。この時代背景やロシアやスターリンについてよく知ってる人はもっと楽しめると思う。でも知らなくても楽しめた。時代が違うから知識とか文明が浅いとはいえ、どの時代も人間って集団になると浅はかでバカだなぁって思った話。「そういうへーコラしたやつのすねにかみつくのは大好きなんだ。怖がってるやつがいたらガブリさ!怖がっているということは、怖がるだけの値打ちしかない人間だということさ。」2022/11/14
k5
78
なんでドイツ文学の人が訳すんだろうとか、「犬の心」の新訳なら大森雅子さんがよかった、とかいうのは私のちっぽけなセクショナリズムなわけで、新潮文庫でブルガーコフ読めることに快哉を叫ぶべきですが、犬の名前だけはシャーリクがよかったな。他にも固有名詞の中途半端な翻訳がちらほらあって、気分を壊すので、こういうのは江川卓だけにしてほしいです。手術のシーンと顕微鏡を覗くシーンにはものすごく興奮しましたが、あとの会話とかはそんなにだったので、ちょっと水野忠夫訳で読み返してみよう。2020/08/26
Aster
74
「犬の心臓」:不気味すぎる…こんなに不愉快な短編は読んだことがない。ソ連の知識がそこまでないので要所の皮肉よりもSFとしての側面を重きにおいて読まざるをえなかった。巨匠とマルガリータは未読だが、周りのコロフへの素っ気ない態度からマジックリアリズムの片鱗を感じる。 「運命の卵」:犬の心臓目当てで読んだがこちらも面白い。こちらは情景描写が多く、淡々と事態が進んでゆく。 解説を読むと、当時のソ連という国を知ればなお面白く読めただろうなと思った。2020/05/09
アナーキー靴下
69
何でこの本を読もうと思ったのだろう…途中何度もやめようかと思ったけれど、一応最後まで読んだ。「犬の心臓」「運命の卵」共に、1920年代ソ連をユーモアたっぷりに描いた風刺小説らしい。確かにそんな感じはするけれど、特に犬が主人公な表題作のほうは残酷過ぎてきつかった。もっと残酷な小説なんていくらでもあると思うけれど、犬がひどい目にあうのを見ると心が閉じてしまって何も楽しめない。「運命の卵」もやっぱり動物の扱いが気になり…そういうの含めて風刺なのだろうけれど楽しめるには至らなかった。動物好きにはお薦めしない。2021/06/05
えりか
62
「ドイツ」から送られた卵が「赤い光線」を照射され怪物へと孵化するなどソ連政権への批判が随所にほのめかされているけれど、ほのめかしを考えなくても奇想天外な物語として楽しめる。人間の勝手な実験によって作られた犬人間の野蛮で下品な行動と、それに翻弄される作り主の博士。どちらが悪か。「犬の心臓」も「運命の卵」も急激に「新しいモノ」を作ろうとしたり、急激に「変化」を促しているけれど、何か(人も国も世界も)新しく生まれ変わるには時間が必要だし、時間をかけてこそその時あるべき姿というものが出来てくるんじゃないだろうか。2017/02/06
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