内容説明
世界が終わるなら、誰に想いを伝えますか?
いまさらながらに、みんなようやく気付いたのかもしれない――もとより、ぼくらに残された時間なんてそんなになかったってことに。
突然、世界は鉛色の厚い雲に覆われた。
雲間から差す青い光が注がれた町は、ひとも獣も、鳥も木も、土も水も、すべてが動きを止めてしまう。誰にも理由はわからない。あっという間に世界は冷えて、どこもかしこもが冬のようになった。
そして凍った町は少しずつ成長していた。
「ぼく」は「彼女」に会いに行くと約束した。最後に電話で話したとき、彼女はとてもおびえていた。
「もう、町には誰もいないの。」ぼくは、ならば「ぼくがそこに行くよ。そうすればもう怖くないよね?」と言った。
これを最後に電話はまったく通じなくなった。むしろこのとき繋がったことのほうが奇跡に近かったのかもしれない。
彼女の住む町まで直線距離で500キロ。
青い光を逃れ、ぼくは彼女に会うことができるだろうか。
彼女はそれまで、青い光に染まらずにいられるだろうか。
『いま、会いにゆきます』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『そのときは彼によろしく』と、ベストセラーを連発した著者による、3.11以降究極のラブストーリー。
恋人、家族、友人など、たくさんの愛が描かれた最高の愛の物語です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あおでん@やさどく管理人
68
【読メ登録500冊目】【第10回やさどく】記念すべき500冊目は今まで読んだ中で一番好きな本を文庫版で再読。優しい人に優しくないこの世界、優しい人は生きづらさを感じることもある。青い光が降り注ぐといったことでも起こらない限り、世界が優しくならないのだとしたら、それは悲しい。2016/12/22
もも
65
かなり久しぶりの市川さん。世界は突如終わりを迎えた。街には空から青い光が降り注ぎ、人も何もかも時が止まり、青く凍りつく。主人公は初恋の人と再会する為に危険な旅に出る。主人公の過去と現在を描きつつ、物語は進む。世界を救うとかそういうこともなく、主人公はただ歩き続ける。愛しい人の元へ行く為に。これは『愛』の物語だ。哀しいけど、優しい物語。もし自分が同じ立場になったら、やっぱり大切な人達の元へ行きたいと願うだろう。主人公と父親の別れは泣きそうになった。世界の最後にはこんなにも『愛』があふれている。2017/02/28
♪みどりpiyopiyo♪
60
どうやら世界は本当に終わりを迎えるらしい―。世界が終わる前に君に会いたい、その思いで僕は旅に出る。■不器用で まっすぐで、「優しくありたい」と思っている人達のお話でした。こういう センシティブで ナイーブで まっすぐな人たちは、私達のこの世界にも 少数派ながらも沢山います。多数派の人達に合わせて作られた今の社会では、少数派の人は生きにくい。■「優しくありたい」と思ってさえいれば優しくあれる訳ではないけれど、みんながそう思っていたならば 世の中はもっと優しくなるよね ( ' ᵕ ' ) (2013年)(→続2018/05/09
SOHSA
45
《購入本》市川拓司の小説はどれも透明感に溢れている。本作は特に、描かれる世界のすべてが果てしないほどの透明感で満たされていた。セカイが静かに終焉へと向かう中で人は誰もがみな優しく浄化され、幸せに包まれたように青く凍っていく。そこには恐怖や畏れ、後悔などは微塵もない。ただあるがままを受け入れることの歓びと穏やかさだけがある。「愛」をとことん見つめ続けた末の風景がこの作品に描かれている。まさにこんなにも優しい世界の終わり方だった。2020/12/12
こーた
45
戦争関係の小説でも感じることですが、人は「死」と対峙すると純粋に愛を求めるのでしょう。今作は特に圧倒的な天災であるためか、より愛が純粋である気がします。2017/04/11