内容説明
第5回日経小説大賞受賞作。日本のエリート社会の典型であるメガバンク。女性総合職第一期生が、本店初の女性管理職に抜擢された。この「出世」が意味するところは? 日本のエリート社会で男性と対等に闘っていけるのか――。「女性の時代」の闇に斬り込んだ、まったく新しい経済小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
81
現役の官僚が書いたということと、日経小説大賞を受賞しているのですが、若干物足りなさを覚えました。エンターテイメントに徹するところまではいかずに、筆者の学生時代の友人たちのイメージを書いていてもう少し突っ込んだ話を期待していたのですが。関連会社をつぶす話と弁護士などの話が拡散している気がします。それなりには楽しめますが。2015/08/14
いたろう
51
都市銀行、女性総合職第一期生も入行20年、女性として初の本店管理職に。男社会の銀行内にあって、女性への蔑視や不当評価との戦い、権謀術策渦巻く権力争い、そして汚れ仕事。何のために頑張ってきたのか――。著者は現役の財務省キャリアだが、銀行内の暗部を深くえぐる手腕は池井戸潤を彷彿させる程。と、思って読んでいたが、最後は新たな展開に向かって、そのまま何だか腰砕け。これで終わっちゃう訳? 他の登場人物たちは? 最後の話は話で深く考えさせられる問題なだけに、改めて別の小説にすれば良かったのに、と思えてならない。2014/12/12
B-Beat
50
◎「日経経済小説大賞」の受賞最新作。業界トップの由緒ある銀行の女子行員にして入行後20年の総合職。関連会社のリストラの陣頭指揮に大抜擢されて孤軍奮闘。周りの上司や部下、同僚や後輩、家族や友人などの思惑や心理・背景も丹念に描く。交渉の現場の緊迫感やリアル感も十分。ただ題名への結び方落とし所が少しばかり強引過ぎたきらいが。尤も企業における女性の役員・管理職比率の向上を最近政府が声を大にして叫んでいることを聞くにつけ、この題名が故にこの作品の大賞受賞もむべなるかなと思うのは下種の勘繰り?。そんな読後感。 2014/06/19
Yunemo
50
何と表現したらいいのでしょう。まず、組織で生きることの難しさ。綺麗ごとではすまない厳しい現実、残念ながら自己実現=出世ではない世界、組織の論理と個人の事情の食い違い、ましてや女性総合職の立場の微妙さ、金融業界そのものが、非常に人間臭さが際立つ世界であることは間違いないでしょう。評価への不信感とか、リストラとか、必ずある問題。それでばかり疲れ切ってしまっている人が多すぎます。つくられた作品というより、現実感を伴って表現された、ということに改めて気付いて読了。けっして絵空事ではない、実感として。2014/03/13
あすなろ
43
女性総合職第一期生という銀行で働く主人公に対し、女子校から東大から銀行と、そういうエリートでひ弱で悩んでいるんだよ、と言いたくなる。ま、それはドンドン萎んでいくが、最後まで払拭されない。しかし、40歳初の会社組織人として、主人公と同じ悩みはある。出世階段を目にし、組織のダークな部分の対応で煩悶し、自分なりに乗り越え方を見つけ、進むというようなこと。自らの転職と多くの友人もいる僕としては、頷ける箇所も多かった。最後に!女性だから悩むが、これって40歳前後のサラリーマンが皆、差はあれ悩む事柄じゃないだろうか?2014/04/29