内容説明
神谷美恵子はつねに苦しむひと、悲しむひとのそばにあろうとした。本書は、ひとが生きていくことへの深いいとおしみと、たゆみない思索に支えられた、まさに生きた思想の結晶である。1966年の初版以来、多くのひとを慰め力づけてきた永遠の名著に執筆当時の日記を付して贈る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
108
文献レビューと著者の考察が織り交ぜられた壮大な論文のような一冊。生きがいを失った時人間はどう生きたかを、多くの偉人の作品をもとに筆者の誠実で繊細な言葉で我々に伝えてくれる。子育ての為当直に入れず、職場での存在意義を疑う日記は現在の女医の多くに通じるがその欲求不満を執筆に捧げた情熱に感服。自分の人生を、疲労と退屈に磨耗させてはいけないと強く思わされた。自殺を踏み止まらせるのは好奇心/攻撃心/名誉心という記載に納得したが、現代人はそれらに加え、人との繋がりの欠如や過労という新たな敵に直面しているのではないか。2020/07/19
はっせー
95
心の問題を深く理解した人におすすめの本になっている。久しぶりに読んでいて頭の顎で噛み砕けない本だなって思いました!でもめっちゃ理解できないわけではなく手を伸ばせば届きそうなところにある。その距離感が絶妙。生きがいについて。私達が悩んだことがない人はいないのではないかと思うテーマ。その中ではりあいという言葉が出てくる。私なりにはこのはりあいという糸が切れてしまったりたるんでしまったりしたら生きがいが持てなくなってしまうのかなと感じた。再読したらまた新しい発見があると思う作品であった!2023/02/27
molysk
85
生きがいとは何か。ひとは生きがいを失ったとき、どのように新しい生きがいを見いだすのか。ハンセン病診療所で精神科医として患者に接した筆者は、将来になんの希望も目標も持たないひとと、生きるよろこびにあふれているひとに出会う。このちがいはどこから来るのか。精神医学のみならず、心理学、文学、哲学、伝記などにおよぶ広い素養と、生い立ちから得られたキリスト教への深い理解が、筆者に生きがいという概念の提示を促したのだろう。物質的な豊かさが、心の満足感や生きがい感に結びつかない。現代人の直面する困難に、示唆をあたえる。2021/04/18
ひろき@巨人の肩
83
国立ハンセン病療養所・長島愛生園の精神科医長も務めて、ハンセン病患者に奉仕してきた著者が「生きがい」について説く。本人も結核を患ったこともあり、「生きがいをうばいさるもの」「生きがい喪失者の心の世界」「新しい生きがいの発見」という観点が特徴的。人生を明るく彩るために必要な「生きがい」を感じる心。そして「生きがい」は、人生の岐路や苦難を通して、変化し深みを増していく。全ての「生きがい」の尊さを語る本書。日本で生まれた「生きがい」という言葉は、確かに、日本語らしい曖昧さとそれ故の余韻と膨らみがあった。2024/04/18
aika
70
希望、というものを、失っては得て、得ては失うことを繰り返して、人はその人だけの本当の幸福を噛みしめることができるのかもしれません。世間から隔離されていたハンセン病患者の方々が、どう苦しみ生きがいを喪ったのか、またどう生きがいを再発見したのか。幅広い分野からの引用に加え、実際の患者さんの手記や肉声の、その人生の底に流れるものに触れたとき、静かな心の揺さぶりと問いがこちらに向いてきます。読者自身のこれまでと今を肯定するこの本は、生きがいを自分に向かって再発見し、未来に歩を進める始発点になるのだと思います。2019/05/11
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