内容説明
昭和48年、小学校3年生の裕樹は県境に建つ虹ヶ本団地に越してきた。一人ぼっちの夏休みを持て余していたが、同じ歳のケンジと仲良くなる「遠くの友だち」。あなたの奥さまは、私の妻なんです――。お見合い9回の末やっと結婚にこぎつけた仁志が、突然現れた男にそう告げられる「秋に来た男」。あのころ、巨大団地は未来と希望の象徴だった。切なさと懐かしさが止まらない、連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
159
★★★☆☆17116 昭和時代の団地住民にスポットを当てた短編集。世間話を。。高度経済成長期に造成した公団住宅。建設規模が大きなものはマンモス団地と呼ばれ、水洗トイレ、バス、ダイニングキッチン、ベランダ等、その時代としては斬新な設備が採用されていて憧れの住宅だったのでしょうね。一般庶民が木造なのに鉄筋コンクリートですから。それだけでもステイタス!ただ当時は集合住宅へのエレベーター設置は稀!今となってはデザイン陳腐化や老朽化も。。よって廃墟化しているところもあるようで廃墟マニアには堪らない物件みたいですよ。2017/12/01
紫綺
143
文庫にて再読。単行本で読了してた(笑)。虹ヶ本団地を舞台に繰り広げられる人間模様の連作短編集。親しみやすい朱川さんのノスタルジックな表現は、私にドストライク!小学生の頃から洋楽が好きだったマセガキの私にも、意味を知らなかった「いとしのレイラ」は切なく響いていた。2016/01/06
KAZOO
111
朱川さんの「かたみ歌」に続く昭和ものの連作短編集です。なうかしい感じがして今回はマンモス団地が舞台となる7つの話が収められています。何かしらつながりがある話で結構謎があったりします。2作目の「秋に来た男」や「そら色のマリア」などが印象に残りました。2021/05/16
Lara
91
虹ケ本団地を巡る、それぞれがつながる短編7作品。昭和40年代か、なんとも不思議な部分もあるが、時代背景がなんとも懐かしく郷愁を誘う。朱川湊人氏の温かさ、優しさ一杯の作品集です。2023/04/25
ふう
82
切なくやさしく、そして懐かしい気持ちになる作品でした。同じように見える団地のそれぞれの部屋に、あたりまえのことですがそれぞれの思いや事情を抱えた人々が生活しています。光が当たって明るいだけの人生なんてあるはずもなく、みな心に哀しみや寂しさを秘めて生きています。そんな人々の前にふと姿を現す雷獣やこの世を去れない魂たち。いないのかもしれないけど、いるのかもしれない存在が、人と人を繋ぎ、そっと背中を押してくれているようでした。どの話も好きですが、マリアの涙だけは理不尽で、木暮のような気持ちにはなれませんでした。2016/03/10