内容説明
祝言を間近にひかえながら暴漢に襲われ、命を絶った愛娘。「仏」の名を捨てて復讐に奔走する父として定町廻り同心・森口慶次郎が初登場する表題作や、妻に逃げられた男と子供を授からなかった女の交情を細やかに描いた「うさぎ」等、ままならぬ運命と向き合う江戸庶民の姿を鮮やかにすくいとった傑作短篇集。
目次
うさぎ
その夜の雪
吹きだまり
橋を渡って
夜鷹蕎麦十六文
侘助
束の間の話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
42
『慶次郎縁側日記』シリーズ(元・定町廻り同心)森口慶次郎、初登場の表題作←裏表紙の説明書きに釣られた繋がりの無い短編集。表題作、すでに『傷』で読んでました。(^^ゞ しかし未読だった他の6編が粒ぞろい。設定を現代に代えたら重すぎる話ばかり。しみじみ人情・人生を感じさせるのは北原亞以子さんの腕ならでは。野暮を死ぬほど嫌う、売れない噺家の物語『夜鷹蕎麦十六文』 口も外見も、野暮の塊な妻女が言い放つ『これは理屈じゃありませんよ、大家さん。わたしゃ、あのとんまが好きでしょうがないんです』 乙粋です。2011/02/02
ろば
41
実は初の作家さんでした。お名前は以前から知ってはいたのですが。。。。 作者独特な市井物って感じがしました。シリーズ物もあるようなので、楽しみです^^2016/04/10
kazu@十五夜読書会
30
2013年3月12日75歳で亡くなられた作者北原 亞以子さんの追悼の意を表して積読本から読んだ。『その夜の雪』慶次郎縁側日記シリーズの一番最初の作品となる、悲劇に見舞われる慶次郎・・・。第三弾「おひで」文庫版の巻末に児玉清さんとの対談があり「涙のにじんで来るような小説を」と、小説新潮からの注文で北原亞以子さんが書かれた作品。慶次郎縁側日記シリーズの原点となる・・・2013/03/21
よむよむ
15
敢えて表題作は未読。『傷』で続けて読みたいので。宮部さんや高田さんより数段おっとな~な時代物でした。‘粋’の質が別モノですな。2011/02/27
Kira
8
図書館本。七篇所収の短編集。表題作は慶次郎縁側日記シリーズの第一話であり、原点でもある。この一篇だけは何度読んだかわからないほどなのに、またしても目頭が熱くなった。このシリーズにどれほど愛着があるんだろうと、改めて思った。他の話もテーマが現代的でありながら、江戸庶民の人情と生きる力のたくましさが描かれている。作者のあたたかいまなざしを感じて、ほっこりする七篇だった。 2021/09/18