内容説明
生きたままの人間を解剖する――戦争末期、九州大学附属病院で実際に起こった米軍捕虜に対する残虐行為に参加したのは、医学部助手の小心な青年だった。彼に人間としての良心はなかったのか? 神を持たない日本人にとっての<罪の意識><倫理>とはなにかを根源的に問いかける不朽の長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
むーちゃん
151
もっと残虐な描写等あるかと思いましたが、そこまでではなかった。「沈黙」読了後だからなのかなと。倫理観等が麻痺したこと、日常的に死になれすぎたこと、宗教感の欠如、いろいろ考えさせられました。 続編がありそうな終わり方で、ちょっともの足りませんでした。 2020/02/18
rico
117
捕虜生体解剖事件を通じて神を持たない日本人の「良心」の有り様を問う問題作、というのが本作の一般的評価だろう。保身と出世に走る上司、サイコパス的同僚、信仰の下迷いのない女性などの存在が、逡巡しつつも流されていく主人公の根無し草的心性の危うさを際立てさせる。だがどうだろう。よって立つもの自体が誤っていたら?有史以来どれだけ多くの命が神の名のもとに失われたか。命を救うべき医者の故の罪深さ。そうかもしれない。だが空襲や原爆で焼き殺すのと、切り刻んで死に至らしめるのと、どこが違うのか。わからなくなる。2021/08/27
やいっち
105
過日、石井部隊関連の本(青木 冨貴子著『731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』)を読んで、本書のことを知った。知ってはいたが、題名だけ。「九州大学附属病院で実際に起こった米軍舗虜に対する残虐行為」を巡る本とは知らなかった。本書が刊行されたのは、一九五八年。当時は日本人にはあまり知られていなかった陰惨な事件を世に知らしめた小説で、衝撃的だったようだ。2022/04/11
ケンイチミズバ
99
人間は神ではない。理由があれば殺してよいと判断できるのでしょうか。良心の呵責とは神に向けた心の迷いや動揺なのでしょう。無差別爆撃を行ったB29搭乗員捕虜はどうせ処刑されるのだから。医学の進歩のため、学部長選挙で軍部の応援は票に繋がる、むしゃくしゃしていた、どうせ戦争で日本はなくなる、自分にはない女の幸せに輝く人を苦しめたかった、医師や助手、看護婦一人一人の言い訳がおぞましい。生体解剖されることを知らない米兵は検査だと信じベッドに横たわるが、麻酔をかけられ抵抗する。全員で抑え込み眠らせた。殺人に違いない。2022/07/26
ykmmr (^_^)
98
誰もが知る、遠藤氏の二大代表作の1つ。今回は、戦争末期に行われたという、「米軍捕虜による人体実験」がテーマ。また、『沈黙』と同じで、読んでいると自然に、映像が湧き上がって来るのは同じで、『沈黙』以上に会っている題名が、その悲惨さと残忍さを強調してくれる。いくら敵国の捕虜だからとはいえ、仕方なかったとはいえ、「生きたまま解体する。」こと。戦時中で、自分もそのうち死ぬかもしれない。また解体されている捕虜も、いつ死を迎えるのか…。そういう想像をする中、実行するというのは。実際に実行している2人。2024/12/24




