内容説明
34歳フリーター、年下の同棲相手は失業中。エアコンは壊れ、生活費の負担は増えていく。昔の知り合いが彼女を連れて転がり込む。どんづまりの生活を変えたのは、はたちの男からかかってきた「テキ電」だった。――生き迷う世代を描き、フリーター文学とも呼ばれた著者の転換点となった傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
masa
82
ラーメン、もつ鍋、イタリアン、そこそこの味と繁盛で同じ店主が閉店と新装開店を繰り返す“東京ラーメン番外地”には『タマシイ』がない。だけど、それに苛立つ『タマシイ』の崇拝者たちは精神的ホームレスだ。例えば無能な大卒を扱き下ろすことにより学歴の無意味さを語り続け溜飲を下げるような。ひとつのものごとへの過剰な執着、偏見に支えられている。窓の内側の明かりに快適な世界を信じる無職。窓の向こうから外の自由を夢見るフリーター。たった一枚の透明な薄い膜により、屈折した視線は永久に交叉することがない。僕は抗う。何に?金に。2019/04/29
MINA
40
とりあえず、恋人ヤスオに別れを告げてほしい。生活がいっぱいいっぱい過ぎると色々麻痺してきちゃうのかな。立花光輝に恋して、入学金援助しようとした気持ちがすごくよく分かるなぁ。そんで光輝が嫌がるのも勿論理解できるし。ナバタメさんはラストでまさかのエグい趣味を披露するし。そしてそれと対面しながら平然と肉を食えるのが凄いわ。生きてく為に必要なことと、やりたいこととの判断を見誤ると身動きが取れなくなるわな。結局、「テキ電」は誰なんだろう…。今のヤスオとの関係って惰性?ヤスオが現実直視できる日が来るのか不安すぎる。2014/08/06
パグ犬
38
『人の生きることのひとつひとつがさらけ出されていくことは、その場所の貧しさに比例するようにも思えた。』…お金に窮し始めた主人公は、生き方がどんどん無防備になっていく。自転車操業のような生活を繰り返している内に、さらけ出された心は元に戻るだけの思考力を失ってしまう。たとえ収入が増え通帳が潤っても、暗たんたる気持ちは変わらないのだ。そして、物語は突然終わる。だが、主人公を取り巻くこの怠惰な日常は結局はエンドレスなのだから、あえて続きを示すまでのこともないのかもしれない。なかなか面白かった。2016/07/08
きんぎょっち
33
自分の価値観が時代によって形づけられていることを自覚している人間は、あまりいない。主役とその彼は、90年代に若者として生きた。就職や堅実な生活を馬鹿にし、フリーターやバックパッカーを選択し、そんな自分たちの自由さにうっとりとする。 彼らは自由意思でそれらを選び取ったつもりでいるが、単にバブルという時代によって生まれた価値観に染まったに過ぎない。 そしてバブルははじけ、手に入れたと思ったものは幻で、最後に残った「若さ」さえも失おうとしている自分たちに気づく。現実世界を生きていくすべが何もない、空っぽの彼ら。2018/01/27
coco夏ko10角
33
フリーター文学…なるほど…。約15年前の作品だけど、当時より今の方が共感…というか読んでて辛くなる人が増えてそう。とても自分は解説の藤野千夜さんのように頬をゆるめては読めず。2016/01/17
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