内容説明
憎しみの中に育っても、「選択」することはできる。
ジハードを唱えるようになった父親が殺人を犯したとき、その息子はまだ7歳だった。
1993年、投獄中の父はNY世界貿易センターの爆破に手を染める
。家族を襲う、迫害と差別と分裂の危機。
しかし、狂気と憎悪が連鎖するテロリズムの道を、彼は選ばなかった。
共感と平和と非暴力の道を自ら選択した、テロリストの息子の実話。全米図書館協会アレックス賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまご
22
相手を,個人ではなくある立場をとっている集団に属したもの,と顔をみえなくとらえると,簡単に2項対立(敵か味方か,好きか嫌いか,自分にとって善か悪か)しやすくなってしまう.信じたものに裏切られ疲弊し単純な2項対立に考えを単純化してしまう,その前に友人や他人からのちょっとした共感がある・それに気づけると,作者のように憎しみを選ばないという選択をすることができるようになるのだろう.テーマパークのバイトもきっと気づくきっかけになったと思う.実はちょっとしたことで,憎しみの連鎖は断つことができると信じたい.2016/03/06
ののまる
21
昨日の朝のニュースで著者が来日して講演したりインタビューに答えているのを観て、あ!いまこれ読んでる!と。なのでイメージしやすかった。親&継父からの虐待だけでも脱するのは大変なのに、しかもテロリストだったら、米社会で生きるのは更に過酷な…。でも著者が言うように、そこからサバイブした人だけにしかできない、伝えられないことがあり、それが使命だと確信することで、自分の人生を親から取り戻すことができると思う。虐待もそうだけど、苦しみ続けても負の連鎖を断ち切ったことだけでも十分、次世代を救った素晴らしい存在だ。2016/02/19
Koichiro Minematsu
19
テロリストの所業だけを考えると、非道極まりないことだが、息子である著者の訴えから、何故テロは繰り返し行われるのか考えると、宗教の違い、思想の違いだけではない、言い表せないと感じる。人の弱みにつけこみ、憎しみに転換させるマインドコントロール。人としての尊厳が踏みにじめられると、人は悪と化する。しかし、著者はその負の連鎖を自ら断ち切った勇気をもっている。2016/02/21
アイアイ
18
7歳の時に父が最初のテロによる殺人を犯す。残された家族は汚点を背負い、出発のたびに前より悪い生活と貧困に苦しむ。 まだ少年だった著者は父の無罪を信じていたが成長と共に、息が絶える最後の瞬間までテロリストである父の異常さに気付く。 イスラム教徒からは感謝され寄付金で生活が出来たが、それはすぐに尽きた。学校での激しいイジメと母の再婚で義父から暴力を受ける 18歳までの葛藤の物語。世界はテロリストの血縁者を恐れている、人間性を見ようともしないで。▽図書館2016/06/27
だろうぇい
14
作者はFBI捜査員から「あなたたちが彼(父)の道に続くのではないかと恐れていた」と告げられる。その逆の道を選んだ理由と過程が気になり手に取った。父がテロリストに至った過程(冤罪、怪我、原理主義への没頭)、テロ後の家族(恐怖と偏見にされされ、時に逆に英雄視される)が子どもの視点から語られるのが貴重。テロリズムを否定した理由として、青年期での多様な人との出会いが挙げられているが、そこで新たな価値観を受け入れられるかどうかには、そこまでの体験や将来の展望が大きく左右するだろうな、と感じた。2016/04/05
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