内容説明
何かワケありの僕は、ある日、突然、妻と子を残して家出する。勤める小さな広告代理店に、寝泊まりするようになった僕。TV局員をはじめ、いろんなギョーカイ人たちと、夜に、昼に、昭和最後のヒートアップする大阪を徘徊する日々。次々とトンデモナイ事件が起こる中、現実と妄想の狭間で僕は……。中島らも自身が「ノン・ノンフィクション」と銘うった記念碑的処女作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てち
125
個人的には、表題作より他の3つの方が好きだと感じた。特に東住吉のぶっ壊し屋とクェ.ジェ島の夜が面白かった。ものすごく荒唐無稽でデタラメだが、そこにはある種、人を惹きつける何かがあるのではないかと思う。ラリリながら書かれた本作は、世界そのものを表してるように思えた。つまり、頭の中を掻きたくても搔けないもどかしさを体現しているということだ。2021/06/06
kinkin
90
表題作の他に「東住吉のぶっこわし屋」「私が一番モテた日」「クェ・ジュ島の夜、聖路加病院の朝」。表題作を読んでいるうちにこのタイトルの意味するところが納得できた。多分著者の中島らも氏がとてもテンションの高い状態で書かれたと思う。「東住吉のぶっこわし屋」はもっと強烈だ。前に読んで一番好きな「今夜すべてのバーで」が「静」ならこちらは「動」の本ではないか。アルコールや薬物で躁鬱を繰り返していたと聞く。現在なら世論からバッシングを浴びるような人も昭和の終わり頃はまだ寛容だったのだなあ。2017/09/25
Shoji
36
これは間違いなく中島らもさんの私小説であろう。 読んでて私の頭の中もカユくなってしまった。 きっと天才なんだろうな。このおっさん。 波乱万丈、複雑怪奇、意味不明。けれどオバカで楽しい。でも切なかったり。 道で軽口を叩いてきた中学生を血祭りにするバース。すごく深刻なはずなのに笑ったし哀愁を感じたし。 大阪はどうしようもない街だし、どうしようもない人が住んでるけど、やっぱ好きやねん! 2016/03/10
えりか
31
海は綺麗だ。珊瑚やお魚の色彩爆発。もっと。もっともっと潜ってしまえ。わお。光が届かない。真っ暗。落ち着く…いや、だめだめ。ここにいたら落ちる一方だ。戻らなければ。明るい世界へ。焦る。急いで海面から顔を出すと眩しすぎて、目が開けられない。一度暗いとこを知ってしまったら、まっとうな世界は眩しすぎる。それでも楽しくやっていくんだ。疲れちゃうな。頭の中がカユイけどかけない。何かで紛らわそう。/「結局人間はどっかにポッカリとばかでかい穴があいているのだ。何かで埋めなくてはいけない。埋められれば何でもいい。」2015/08/07
黒猫
30
あー面白かった。中島らもさんの初の自伝的な小説。4日かけてマンションにこもりきりで酒と睡眠薬でラリった状態で書き上げたと言っている。しかし、内容は笑いの中に悲しみが溢れている。悲しみの中に読者は笑いを見いだせる。これは希望の書と言えるだろう。らもさんの営業マン時代の話。つま先を見ながら謝る練習をし続け、酒に飲まれある日突然会社をやめようと決意した日。らもさんの悲痛な叫びが笑いに乗って聞こえてきた。バースのお面をかぶりながらフラフラ繁華街を歩き、お面をおっさんに渡して補導されるおっさん。再読確実の作品です。2018/02/15