新潮文庫<br> 青春は美わし

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新潮文庫
青春は美わし

  • ISBN:9784102001042

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内容説明

何年ぶりかで家族の住む故郷に帰ってきた青年は、昔恋したことのある美しい少女に再会する。しかしその愛は実らず、その上、妹の友達への恋にも破れる。彼は孤独な、しかし清らかな思い出を胸に故郷を去って行く……。ふるさとを懐かしみながら放浪に心ひかれ、地道に生きようと願いながら浪漫的な憧れに駆られる青春の心を抒情性豊かに謳いあげた表題作。他に、「ラテン語学校生」。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

132
ヘッセの初期の中編2つ。どちらも片思いをテーマにしており、読者の胸を揺さぶる内容を持っている。「青春はうるわし」では、主人公の少年が恋を寄せるアンナが魅力的な登場人物。少年の想いは届かないが、同じように片思いに苦しむ者同士として彼に友情を示してくれる。この友情は彼が生きていく上で、かけがいのない物になるだろう。「ラテン語学生」は失恋を乗り越えて生きてゆく主人公の姿がまばゆい。熱に浮かされたような初恋を経て、彼は本当の意味での愛を知ったのだ。どちらの物語も美しい自然描写に彩られており、読んでいて心が和んだ。2016/10/22

優希

100
青年と故郷というモチーフが美しい物語を織りなしていました。純粋で清らかな2つの恋の物語。どちらも叶わぬ恋でしたが、綺麗な失恋であり、傷つけることなく大切なことをそっと心の中に灯として残して行くのが印象的でした。きらめく風景が青春の一瞬の輝きを閉じ込めているように感じます。叙情豊かな世界に心が洗われるようでした。2016/01/16

猫丸にゃん太

66
「青春は美し」は青年が休暇で帰郷した一夏の思い出での物語で、ヘッセの故郷の美しい自然の中で描かれる家族の団欒と恋の物語に心温まる。特に主張がある作品ではなく、麗しい詩が世界を奏でる青春の賛歌である、森の中の木洩れ日の小道は黄金色に輝き、その温もりは旅人の心を癒す。ヘッセの作品は家族や友や恋人との愛と苦悩が描かれる事が多いが、この作品は珍しいほど平和で限りなく青い、空と海の青が水平線で溶け合う様に青いわけではなく、森の優しい緑の様な安らぎの青なのである、遠く振り返れば青春も陽だまりになるのかな。2015/06/08

aika

51
見たこともないドイツの田舎町の色彩豊かな風景が、目の前にぱあっと広がるような描写がそっと心に残る表題作。ヘッセその人を重ねた主人公の青年が帰郷し、心配しながらも彼を見守る両親の温もりや、天真爛漫な弟妹たちが可愛らしかったです。淡い恋が終わるとき、再び故郷を発つ青年の後ろ姿が大きくなったように見えました。併せて収録された「ラテン語学生」では、お手伝いの世話好きなバベットが魅力的。少年カールが恋したティーネの大人びた佇まいと、彼女に訪れる思いもかけない未来を受け止めるカールの内面的な成長が輝かしく感じました。2021/03/15

みゃーこ

43
何年振りかに家族の住む故郷に帰ってきた青年が昔恋したことのある美しい少女に再会するが恋は破れ、さらに妹の友人への恋にも破れる。失意を胸に故郷を去る。青春時代の嗚呼く切ない揺れ動くあわい恋心やロマン、憧れを魅力いっぱいに描かれる。ヘッセは無常観を孤独感に根ざす抒情的な哀調と超俗的なユーモアがよどみなく分の中に溶け合っているのである。2015/06/14

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