内容説明
激動の半生をもとに渾身の筆で書き尽くす畢竟の自伝的小説。安吾賞受賞とともに昔の破滅的な恋が蘇る「デスマスク」、得度を目前にして揺れた心を初めて語る「そういう一日」など、胸に刻まれた体験を渾身の筆で綴った自伝的短編小説。『場所』(野間文芸賞受賞)の対をなす珠玉の短編集。2011年の第39回「泉鏡花賞」受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さいちゃん
6
学生時代に初読み作家さん当時「瀬戸晴美」さん以来何十年ぶりかの二作目。波乱万丈の生き方に裏付けされる自伝的短編集。描かれている男女の様々な関わり模様が寂聴ワールド。好きも嫌いも感動もなんとも言えない読後感。ただ厚みのある魂が感じられ、そうかぁと。2019/05/10
織沢
1
三島由紀夫は「晴美」と名乗っていた頃の著者に「どうして手紙はあんなに面白いのに小説はこんなに詰まらないんだ」と言ったそうだが、似たようなことを感じた。 自伝的はじめの三作は、老死の苦しみを背景に過去で捨て去ってしまった恋の苦しみが滲み、とても良い読み心地だった。しかして後の四作はどうだろう。巧く面白い小説であることに間違いないが、不倫や私生児といったテーマは少し食傷気味になる。薄い本なので一気に読んでしまえばそんな事もないかも知れない。2021/03/02
玉露
0
自伝要素の強い前半三編と創作要素の強い後半四編を収録した短編集。個人的には、さまざまな人生経験を積んだ作者にしか出せない趣や立体感のある前半三編の方が好み。2022/09/24
悸村成一
0
読了122冊め。7編。最初の3編は自伝的な題材だが、あとの4編は違うように見える。2021/12/22
ふぁんと
0
自叙伝的短編小説なので、実在の人物との重なりも興味深く読める。 上の動きがなせる行為にぎょっとするような場面もあった。悋気がなせるわざだとしても、愛情深さがなせるわざだとしても、平生で考えるとちょっと考えられないような。さすがの作者の経験や表現力である。 ただ、どの女も男も、きっと、身の回りにいるのだと思う。こういう情動や身勝手さは、もしかすると珍しくはないのかも知れない。そう思わせてくる点でも、この作品は恐ろしい。2020/11/16




