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内容説明
ヒトを翻弄する貨幣。あるモノが貨幣たりうる条件とは何か。それを考察するのに恰好の対象がある。タカラガイだ。呪物・護府・威信財・装身具や遊具と用途を変える貝は、なぜ貨幣にもなり得たのか。新石器時代から現代までの「時間」。大興安嶺の山麓からアフリカ大陸まで環のように経巡ってきた「空間」。史料の渉猟と雲南やチベットなどの踏査をもとに、時と場の両面から貨幣成立の謎や貝を取り巻くヒトと社会の諸相に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クサバナリスト
11
タカラガイという貝貨。貨幣の『貨』の字に『貝』が何故あるのか今まで考えたこともなかった。途中、著者の旅の話(フィールドワーク)が続き、少し読むのが嫌になってきたが、最後に奴隷貿易との繋がりが語られ、タカラガイが世界の貿易の一部を担っていたことに驚いた。2016/05/15
さとうしん
5
中国のタカラガイ貝貨というと殷代のそれが思い浮かぶが、本書が主に取り扱っているのは、雲南で唐代あたりから明末清初のあたりまで用いられた貝貨。タカラガイの民俗に関連して、著者によるフィールドワークの成果の紹介など、とりとめのない話が割と続く。著者自身はそれを柳田国男の影響とするものの、系譜としてはフレイザーの『金枝篇』からの流れと位置づけた方がよいかもしれない。2016/02/24
Hiroki Hatano
3
交易から文明が生まれる。動物は生息する生態環境の拘束されるが、ヒトだけが異なる生態環境からモノを移転して生態環境を自らの好むように改変した。本書はタカラガイを切り口にして、タカラガイが貨幣として利用されるようになってから淘汰されるまでの時間の流れと、生息域から離れるに従い、タカラガイが遊具、飾り、呪術の道具、貨幣へと価値の階梯を上げていく場の流れを追うことで、貨幣の本質にせまる。貨幣を発明したヒト、翻弄されるヒトに興味が尽きなく、楽しく読めた。面白いね。2016/09/19
in medio tutissimus ibis.
2
貨幣の条件とは均一性、希少性、持続性である、という結論には大して意外性はなく、どちらかというとそのために著者が調べたり体験した雲南の歴史だの東南アジアの民族の祭りだのを本筋とか関係なく丸ごとお出ししてくるのが読みどころである。学術っぽい顔をしているが完全に趣味の本なのではないか、と疑うが一応著者には著者なりの哲学があってこうなったらしい。それでも割と散漫に各地のタカラガイ風俗を紹介する第二部よりは、東南中国史の趣のある第一部の方がタカラガイを通じた政治経済を感じられて面白く読めた。希少すぎても貨幣には失格2024/01/14
もるーのれ
2
東洋史を軸に、タカラガイの利用状況が通史的に紹介されており、貨幣としての利用形態は興味深い。特に中国・雲南省などでは、近世まで貨幣として通用していたというから驚きである。しかもタカラガイの中でもハナビラダカラのような小型種が選好されるのが面白い。考古学の世界では、縄文文化でのタカラガイの装身具などがあるが、異なる地域ではまた別の使い道があるものだなぁ。2020/03/07