内容説明
<p>それは旅というより、姿を消しつづける行為であり、
〈暗黒星の彷徨=ダーク・スター・サファリ=〉にほかならない。</p><p>チャトウィン『ソングライン』、ブーヴィエ『世界の使い方』に続く、
「オン・ザ・ムーブ」シリーズ第3弾。
アフリカの光と闇の奥をめざして、サファリをつづける。スワヒリ語の「サファリ」とは「旅」を、そして「音信不通になること」を意味する。</p><p>ハイエナ、象牙の密輸、ゴミ溜め、酷使されるロバ、
丸石敷きの路地にある剥き出しの汚水溝、
薄暗い小屋へ客を誘いこむ暗い目をした女……
セローがアフリカの地で見出した、西洋近代とはちがった「世界のあり方」とは?</p><p>原著 Dark Star Safari: Overland from Cairo to Cape Town</p>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田中
26
アフリカを駆け巡った長編記。絶望国家が連なっている。読んでいる最中に表題の本意をのみ込んだ。この大陸は地球と違う危険な「暗黒星(ダークスター)」だ。仕事がない、道路がない、廃れた町、内戦と紛争と破壊、10代からセックスまみれらしい、窃盗と物乞い、汚職政治家、見捨てられた民と悲嘆が集積した社会。海外援助団体の活動が実を結ばないのはその理念そのものにあるとはなんとも皮肉だ。観光客が享楽するサファリツアーは架空の楽園。アフリカのカオスを知り関心がわき起こってしまった。著者の大切な鞄を盗まれたのは気の毒だった。 2020/12/25
Shin
15
ステイホームのお盆休みにのんびりと読む。全てが〈横溢〉したアフリカ旅行記、であると同時に近現代史でもあり、比較人類学でもあり、国際政治学でもあり、文学批評でもある。アフリカ奥地のありとあらゆる種類の人々との対話もあり、ページを捲るごとに不規則に現れる彼らとの出会いと別れは、一見無秩序であるようでいて、何かひとつの重層低音—アフリカであることの恍惚と哀愁―によってひとつの物語として束ねられているように思われる。登場する全ての人にも物語があり、作者自身の物語と時を超えて錯綜する様は、これぞ人生という趣もある。2021/08/15
taku
14
東アフリカを縦断、ずっしりと旅を読ませてくれる。人々との出会いを大切にしているところがよく、他に読んだアフリカ紀行本とはまた違った視点を得られる。各地の状況や著者自身の感性には複雑な気分にもさせられるが。見て感じたことを記録するだけに留まらず自己の内面にも結び付けていき、当時の国々を鋭く捉えている。一筋縄ではいかず、ある面でどうしようもなく、しかし惹き付けるものがある。それがこの大陸なのかもしれない。お気に入りさんの感想で知った本、読み応えたっぷりでした。2021/02/10
mikarin
14
村上春樹の期間限定サイトで「この本を読んで同じ行程の旅をした」という人がいて興味をもった本。プロフィールを読むと他にも色んな旅行記を出しているので読んてみたい。でもどれも長いらしい。この本もとても長かったデス…。カイロからケープタウンまで。歴史もまじえつつ様々なアフリカを描き出してくれます。もちろんあえて危ない旅をしているので危険で不潔で暴力的な部分が多いけど。2001年の旅なので今はまた状況が違っているのだと思いますが、全然知らなかったことを知ることが出来た貴重な読書体験でした。2015/07/07
kanaoka 58
7
かつて「月が出ると全アフリカが躍る」あいだは、アフリカの近代化は完成しないと言われたが、まさに人々の生の短さ、西欧時間概念とは異質な時間感覚そのものが、アフリカにおける西欧的発展を阻害しているのだろう。西欧的経済・文化価値、さらに政治的思惑がまとわりつく人道支援、それらはアフリカに何ら本質的な変化をもたらさず、ただ破滅をもたらした。アフリカに変化を起こせるのはアフリカ人だけと著者はいう。アフリカはこれからもアフリカであり続けるのだろう。2015/10/16