内容説明
“近代世界を一つの巨大な生き物のように考え、近代の世界史をそうした有機体の展開過程としてとらえる見方”、それが「世界システム論」にほかならない。この見方によって、現代世界がどのような構造をもって成立したかが浮き彫りとなる。すなわち、大航海時代から始まるヨーロッパの中核性、南北問題、ヘゲモニー国家の変遷など、近代のさまざまな特徴は、世界システム内の相互影響を分析することで、はじめてその実相を露わにするのだ。同時にそれは、歴史を「国」単位で見ることからわれわれを解放する。第一人者が豊富なトピックとともに説く、知的興趣あふれる講義。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei-zu
40
著者による「砂糖の世界史」(岩波ジュニア新書)があまりにおもしろかったので、本書にも手を伸ばしました。 国の発展は、単純に工業化や市民革命を背景にするものではないという著者の指摘には説得力がある。国や地域の相互依存は、「グローバル経済」がうたわれる以前から国々の社会構造に重く横たわっていたようです。 世界史がお好きな方は、ぜひご一読を。2022/04/20
壱萬弐仟縁
37
南北問題は、北が工業化され、南が食糧・原料生産地として開発された結果、経済社会のあり方が歪んで生じた。南は猛烈に低開発化された(26頁)。民衆の保護者コベットによれば、ジャガイモとはアイルランド人の怠け芋で、労働者が主食にしているのは、経済的抑圧のしるしにはほかならない(192頁)。2016/07/03
みねたか
29
ヨーロッパ中心の近代世界システムの成立をわかり易く解きほぐしてくれる書物。端的には,近代世界システムの特徴は,帝国として政治的に統合されず,大規模分業体制として成立し,あくなき成長拡大を追求する内的動機が内蔵されていたため拡大膨張を続けたこと。それにしても、周辺世界を原材料生産地として猛烈に開発し,奴隷制という形で人間自体も商品とし,原料供給地との三角貿易を通じて本国の利益を得ていった様子はおぞましい。2016/08/05
mob
27
・歴史からなぜか小説の解説まで、あちこちで目にする世界システム論。図書館で軽い文庫が目に付いたので手に取る。 ・サピエンス全史などの後でもあり、既視感多くスムーズに読んだ。向こうで補足されるパイの拡大時の論理が雑だが、他は理解・確認と納得がスムーズに進んだ。 ・放送大学教材由来らしく、簡潔でわかりやすい。楽しいゾンバルトが面倒くさくなる程度にはリーダビリティ良し。 ・もっと簡略化したものでいいから、就職活動どころか大学選び(学部選び)の前に子どもに読ませたい内容。2021/08/22
kakoboo
23
学校の歴史で学ぶようなアプローチではなく、マクロ的な視点とモノに焦点したアプローチの両方から世界システム論を紐解いています。川北先生の本は、歴史を単一的に見ている自分の癖に気づかせてくれるのが良いですね。労働者が豊富だったのでイギリスの産業がアメリカ・ドイツに抜かれた、ピルグリムファーザーズについてのアプローチ、北米東海岸とカリブ海地域の発展の差、どれも非常に面白いです。 一点、放送大学の講義ですので限られた紙面でサクサク読める反面、もう少し細かいところまで内容を知って見たかった感はあります(好みですが)2018/02/01