内容説明
没後十数年たっても愛され続ける作家・井上光晴。その生涯は多くの謎に包まれていた。旅順生まれ、炭鉱での労働経験、それらはすべて嘘だった。何事もドラマチックに仕立てなければならない、「全身小説家」井上光晴の素顔とは? そして、ガン闘病の真実。小説家・井上荒野が父の魅力のすべてを書きあげる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
tomi
29
「地の群れ」などで知られる作家・井上光晴は死後流布していた経歴がでたらめだった事が判明して話題になった。幼少時のあだ名は「嘘吐きみっちゃん」。小説どころか自筆年譜まで虚構だらけ、気分屋で我がまま、型破りな素顔を娘の井上荒野(本名で名付けも光晴)が愛情込めて描いている。著者の作家デビューを喜び、新聞の記事や広告を切り抜いていたという子煩悩振りもほほえましい。2015/04/24
ゆっ
7
井上光晴さんという小説家はこの本で初めて知った。ウィキで確認したけど、知ってる作品は1つもなかった。荒野さんの原点がお父さんにあるのなら、1冊手にとってもいいかなと思った。井上荒野さんの本を1冊でも読み終えてから、この本を読むと面白いはず。2014/09/18
K K
6
よかった。大好きな井上荒野が書いたお父様に関するノンフィクション。私なんかは父と相性が悪いから羨ましい限りですが、井上荒野さんの旦那様はよほど器が大きいと見た。私が男性なら、こんなファザコンは選ばない(笑)今生きていたら、ゲスになりかねない、堂々と不倫しバーに泊まったとのたまうお父様。自分を捨てたお母さんに宛てた手紙が泣ける。妻には母親のような人を求めていたのであろう。破天荒で無茶苦茶な父。しかし憎めない。ヤドカリの話は衝撃。最後まで手を焼かせたチチ。しかし最期は泣ける。この父ありて、荒野あり。2017/03/26
あいくん
3
☆☆☆☆井上荒野さんは東京生まれ東京育ちなのですが、故郷はと聞かれると佐世保ですと答えてしまうそうです。 母親の実家は佐世保のアーケード街にあるそうです。 たびたび佐世保に出かけ、佐世保からの取り寄せ品に囲まれて成長したということです。 1993年、父の死の翌年、荒野さんは母親と崎戸島を訪ねます。 この島は後に「切羽へ」の舞台になります。 2010/07/07
銀木犀
2
実は著者の作品はひとつしか知らず、井上光晴に至っては全く読んだことがないが、なんとなく読んでみた。前半は苦痛だったが、おしまいのあたりは面白く読めた。妻の献身によって成り立つ作家というあたりに時代を感じる。2世女流作家は「父の娘」が多いと良く聞くけど、なんかわかるなあ。違う人もいるけど、この作者はまさにそんな感じに思えた。2010/05/25
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