内容説明
確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達――。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。
目次
無言のうちは
里見え初めて
陽に朽ちゆく
杉を訪ねて
千人のあいだ
海を渡り
静こころなく
花見る人に
肱笠の 肱笠の
鯖穢れる道に
まなく ときなく
帰る小坂の
著者から読者へ
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