内容説明
あの山桜の下で妻の墓を守りながら最期の時を迎えよう。構ってやれなかった償いとして――。武田・上杉が熾烈な戦いを繰り広げる上信越。<老渡り>月草は殺戮の山野に独り、妻との約束の地へ向かう。待ち受けるのは思いがけない善意と信じ難い我欲。大人気「嶽神」シリーズ中、屈指の感動作。『逆渡り』改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
jima
24
月草が主人公。9章。これまでのような戦闘ではなく、人生との闘い。耳千切れの山犬との闘い、大火傷を負った村長の孫の話、姥捨て、どれも人生とはを考えさせる内容だった。「今日を生き、明日を生きるためには、今日まで歩いてきた道は正しかったのだ、と思うしかない」と。2016/09/15
アオヤマ君
17
時代は戦国時代、信玄、謙信が覇を競いだす少し前の甲斐信濃近辺の山々。亡き妻との約束の地、若き頃共に見た山桜のもとへと向かう老いた山の民「月草」。自分の属する四三衆と離れてのひとり旅。逆わたり。たのむは自分のみ。ロマンスか?いえいえ戦いも含めての凄絶な旅、サバイバルなハードボイルド。途中読みながら歯をくいしばる場面も何度か。姥捨のあたりは見てきたのかなリアル。生死は紙一重、生々しい描写。出会えて良かった名作。巻末の数行は特に滲み入る。2023/02/09
まろにしも
16
何とも良い味わいがある。月草も無坂も、心優しい山の民だけど、道に反したことをする者には、情け容赦がない怖さもある。だからこそ生き残れたのかもしれないけれど。だけど、このシリーズは寝る前とか、休みの日とかに読むと、なんかホっとする。ただ、生きていくことの尊さを再認識させてくれる。2024/09/08
キリン
15
とても読みやすく、感動的な内容でした。2018/02/26
YONDA
14
前作では脇役であったが存在感を出していた月草の話。今までの作品とは違い、ラストの桜との出会いは何とも言えない感動的な描写であった。2024/05/11