内容説明
周也だけがたったひとつ、私のもの――施設育ちの芳子と周也は、実の姉弟のように生きてきた。仕事が続かぬ周也を常に優しく受け入れる芳子。芳子にはわかっていた。周也を甘やかし、他人から受け入れられないことを受け入れられないほど駄目にしてきたのは自分だということを。そして周也がある罪を犯したとき、芳子は二人でもう戻れない選択をする――幸福に向かっているのか。絶望に向かっているのか。直木賞作家の意欲作!
目次
第一章 降り暮らす
第二章 闇に揺れる
第三章 夜を捨てる
第四章 風に眠る
第五章 波に惑う
第六章 時を祈る
第七章 空を射る
第八章 月を這う
最終章 降り暮れる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kei
83
だからぁ、あかんあかん、と言いながら、最後まで一気読み。どこかでみたような通俗的展開でありながら、目が離せないおもしろさです。唯川恵さんは、著作もたくさんの人気作家さんですが、文庫になっている本は、やっぱり総体的に人を惹きつける魅力ある本だと、再認識いたしました。2024/03/26
ちょろこ
77
降り止まぬ雨、の一冊。まるでしとしと降り止まぬ雨、時には豪雨になるかのよう世界。読めば読むほど心まで濡れるように暗く淋しくなる、だから読み手は少しでも暖かな日差しを求めたくなる、そんな感覚に陥らせ一気に読ませていく物語。人が初めて得た愛をかけがえのないものとして大切にしたい感情、それを喪う怖さは理解はできる。ただ芳子は自己陶酔、自己満足しているだけとしか思えなかった。愛にも幸せにも定義はないけれど、最後まで自分には「究極の理解不能の怖い愛」の言葉しか思い浮かばなかった。2018/10/16
優希
62
辛いけれど、恋愛を超えた恋愛だと思いました。少しの幸せが向かうのは絶望でしかないのです。誰にも言えずに愛を育む不幸とでも言うべきでしょうか。運命には抗えないのが苦しかったです。着地点が幸せとも不幸せともとれるのが切ないところですね。2021/10/24
ナマアタタカイカタタタキキ
52
出会いと別れの繰り返しがただただ辛い。もちろん背中を向けたその冷えきった場所にだって、やがては花が咲くこともあるのだろうけれど、時の流れというのは常に私らを後ろから急かすので、ようやく振り返った時には、もう遠くなりすぎてよく見えなくなっている。愚かしい選択に対するもどかしさを、これを読んだ多くの人が感じるだろうけど、それでも想いというのは、誰にとっても容易には手離せない羅針儀なのだ。いやー、でもこんな弟、私なら呆れてどこかで見捨ててしまうだろうな。はは2019/03/03
らむり
47
切ない、でも面白かった〜。こういうお話好き。今まで読んだ唯川恵さん作品とは違う雰囲気でした。2013/09/10