内容説明
服は人なり、という衣装哲学を具現したカエアン製の衣装は、敵対しているザイオード人らをも魅了し、高額で闇取引されていた。衣装を満載したカエアンの宇宙船が難破したという情報をつかんだザイオードの密貿易業者の一団は衣装奪取に向かう。しかし、彼らが回収した衣装には、想像を超える能力を秘めたスーツが含まれていた……後世のクリエイターに多くの影響を遺した英SF界の奇才による傑作の新訳版。星雲賞受賞作。解説/中島かずき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
90
この本が元ネタになった『キルラキル』も『グレンガラン』も観てないのですがこの本はすこぶる面白いし、今も新しいと感じます。よくある自己中心的な寄生型異星生物かと思いきや、受動的に自分の望みを叶えつつも宿主とは唯一無二で対等関係を結んでいるという関係性はファーストコンタクトものでは珍しいのでは?そんなスーツのイメージとしてはシンビオート的なものでした。そして服飾物に依存して自我を無個性化していると思われがちなカエアン人自身の考えは人類文化学での「文化をどのような視点で見るかのギャップ」が現れていて興味深い。2016/10/05
催涙雨
56
なんというか、これは好きだろうが嫌いだろうがお構いなくたいていの人が同じような感想を書いてしまうタイプの作品だろうな、というイメージ。奇抜なアイデアが矢継ぎ早に登場しては打ち捨てられていく様にある種の感動さえおぼえ、どうしたって真っ先にそれに言及したくなるのだ。初っ端のインフラサウンド獣からしてなんだか凄まじい存在なのだが、これにしても導入限りで二度と登場しない。ラッカーやラファティなんかにも言えることだが、一見ばかばかしいことをまじめくさったふうに書いてみせるSF作品が個人的に大好きなんだと思う。性質的2019/04/10
ざるこ
52
宇宙に住居を移して長い人類。難破した宇宙船に盗みに入ったペデルは特別な1着の背広を発見する。超低周波音で戦う獣がいる惑星とか蠅だらけの惑星が出てきたと思えば、ヤクーサ・ボンズ(ヤクザ坊主)率いる宇宙を素っ裸で筏に乗る日本人由来人類と、金属で覆われた宇宙服着用のロシア由来ソヴィア人の日露小競り合いが勃発していたりと、もう頭の中はアニメ調!スーツが着用者を支配する物語なんだけど、アイディア満載で想像力フル回転で楽しめる超娯楽SF。その先の未来が読める結末もよかった。40年前の作品だと…何年たとうがおもしろい。2019/02/11
fukumasagami
35
「ひとつ、ぼくの取り分にしたいものがあるとしたら、このスーツだな」とペデルは言った。 マストは横目でスーツを見ながら、「カエアンの連中の生き方は相当変わっているそうだな」と、どっちともとれる言い方で言った。「あいつらみたいに、服に人間を支配させるんじゃないぞ」 ペデルは歓喜のあまり、その言葉をろくに聞いていなかった。カエアン製の、本物のフラッショナール・スーツの所有者になったのだ。そしてもうすぐ着用者になる。自分にそう約束した。 2016/07/30
瀧ながれ
34
着用する服によって、身分や思想や行動やあらゆることを表しているカエアン人の、不時着宇宙船からスペシャルなスーツを盗み出したペデルは、そのスーツの魅力でたちまち経済界の頂点に躍り出る。からの、あっという間にスーツを奪われたペデルがスーツを求めるのはわかるんだけど、スーツもまた、ペデルを理想的な着用者と認識して、彼のもとに帰ろうとするのだ。…映像が頭に浮かんで、忘れがたい場面である…(トリハダ)。たくさんの人に影響を与えたSF作品というのが納得できる読後感。クライマックスの草原の風景も、強烈すぎて夢に出る。2016/07/30
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