講談社文芸文庫<br> エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集

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講談社文芸文庫
エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集

  • 著者名:金井美恵子【著】
  • 価格 ¥1,771(本体¥1,610)
  • 講談社(2016/04発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062902946

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内容説明

過去と現在。記憶と現実。存在と不在。 自己と他者。周到に仕組まれた言葉の奔流が、確かと信じられている輪郭をことごとく溶かし、境界を混じりあわせ、めまいにも似た乱反射を読む者に引き起こす。「読むことが、私の生きている証し」老練な読者たる著者が、最初期二作品を含む初期作品群から、現在の眼で選んだ短篇集、第三弾。

目次

エオンタ
自然の子供
河口
水鏡
洪水の前後
花火
著者から読者へ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

R子

18
6篇を収録。とりわけ好みだったのは「自然の子供」。海に浸され、やがて融けていく。記憶も、存在も。浜辺に打ち上げられた溺死体。鏡越しの謎の男。崖からの墜落、街中での邂逅、突き刺さる硝子の破片、、どのシーンも白昼夢をみているかのような現実離れした感覚に陥るのだけど、ドラマティックで只々魅了された。全篇、記憶の歪みとデジャヴに翻弄されつつ、モチーフとセンテンスのリフレインが心地良かった。中でも水と肉体の描写が美しくため息。金井美恵子氏の文章に潜ることの贅沢を味わった。2025/02/15

あ げ こ

16
〈水〉と〈肉体〉の接触、あらゆる粘度の〈水〉を介した接触、あらゆる粘度の〈水〉性のものとの接触。密着させる、限りなく、出来得る限り。互いに影響し合うような、浸食し合うような、境界さえ見失って、境界を混じり合わせるような。そのような深々と濡れている過剰な接触の果てに。〈わたし〉は〈わたし〉を共有する。複数となる。いくつもの記憶とイメージが溢れ出し、けれど語りの主体そのものも混ざり合っている。〈わたしたち〉は〈わたし〉を共有する。〈共有と分裂の原理〉、〈わきあがる水とくずれる水〉が同時に起きているということ。2023/11/16

あ げ こ

11
読んでいる。生きている。存在している。その緩慢さ。その息苦しさ。その難しさ。その曖昧さ。その脆さ。その当然さ。その気怠さ。その汚さ。その難しさ。その唐突さ。その艶めかしさ。その醜さ。その美しさ。その危うさ。その淡さ。その濃さ。その不毛さ。その不確かな記憶の確かさと、その確かな記憶の不確かさ。その不完全な心当たりの完全さと、その完全な心当たりの不完全さ。溶け合い、同化し、かすみ、混ざり、失い、重なり。境目も、輪郭も消え、生を、死を。読んでいる。生きている。在る。強く感じる。うんざりする程に。酷く高まる程に。2016/05/27

おかだん

5
灼熱の都会の夏に遠い日の寒い逢瀬を思い、狂人達とのある意味息抜きとも言える語らい。放置された裕福な子供達の死への餓え。日々の重い事柄さえないがしろにするほど欲したのにその名前さえ思い出せない女。一見不条理に思えるが、繰り出される文章には時代性がほぼ感じられず、人間の心理を淡々と描き出す。人は自分の心をどれほどわからないでいるのか。文章の一片一片がこちらに問いかけてくるような、ヒリヒリした世界。2025/03/02

ふくしんづけ

4
海辺に立ち、見ている。かと思えば、視点は下がって支脈の川が描かれ、視界はそこが始まりであったことを知る。映画的トリックに満ちた視界の動きが演出され、現在から過去という小説ならではの時間の動きも、そんな騙し絵のひとつのようにして、明かすではなく、惑わすことを目的として、描かれていく。描いて、描いて、読むことで深まって。それは理解を拒絶することだと、誰かが言っていた。抽象的に閉す結末も、読み手を宙吊りにして、帰還を許すことなく。明確な着地点として記憶に留める形を与えてはくれない。意地悪であるから欲しくなると。2020/06/29

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