内容説明
江戸と諸国を独りで結ぶ、通し飛脚。並外れた脚力に加え、預かった金品を守るため、肝がすわり機転がきき、腕も立つ男でなければ務まらぬ。蓬莱屋勝五郎の命を受け、影の飛脚たちは今日も道なき道を走る。ある者は寄る辺ない孤児を拾い、ある者は男女の永遠の別れに立会う。痛快な活劇と胸を打つ人間ドラマを共に備えた四篇を収録。著者の新世紀を告げる時代小説シリーズ、ここに開幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やま
64
① 蓬萊屋勝五郎の命を受けて、江戸と諸国をひとりで結ぶ、通し飛脚の物語です。蓬萊屋勝五郎の手の者は、何人もで継いでいく継飛脚と違い、八百両もの大金を一人の飛脚が責任をもって運ぶ飛脚たち、もし失ったら全額を勝五郎が負担します。このために人の通らない道を大金を持つていると悟られないように走り続けます。→2022/10/28
優希
46
痛快ながら胸を打つ作品でした。影の飛脚たちが格好良くて、それぞれの人間ドラマを描いていきます。面白かったです。2023/02/22
楽駿@新潮部
31
読書会仲間本。初読み作家さん。通し飛脚の話だが、荷物なり、金銭なり、遠路を1人で最初から最後まで届けるお仕事。今のように、仕分けをして、地域ごとに荷をまとめて扱うのなら、効率は上がっても、そこに人としての思惑や願いは見えてこない。けれど、事情を聴き、その思いに応えるための荷運びは、送り手、受け手、双方の生き様に関わってくる事になる。それを面倒くさいと、知らぬ顔をできないところが、なんとも情があり、つい、引き込まれた。荷物ではない。その人の人生も請け負っている。良い本を紹介していただいた。満足の1冊!お薦め2020/01/08
goro@the_booby
14
通し飛脚問屋蓬莱屋の気骨ある仕事師達の連作短編で構成されてます。なかでもお気に入りは「出直し街道」です。歳を重ねてきた身には震えるような最後のシーンでありました。若い者には出せない味を各編の主人公たちが見せてくれます。これはシリーズを追わねばなるまい!2014/10/26
うえぴー
9
志水辰夫、時代小説初のシリーズもの。第1作品集。中篇4篇を収録しているが、どれも長編並みのアイディアが詰まっており、贅沢な読書をした気分になった。1作ごとに視点人物が違っているが、飛脚問屋の「蓬莱屋」の飛脚が主人公になっているので、ゆるい連作といったところ。出てくる人物が、とにかく魅力的。特に第3話「ながい道草」に出てくるある人物が、ほんとうにキラキラ輝くような魅力を振りまいていたのに、それを退場させてしまうなんて……もったいない! シリーズがあと2冊あるので、こちらも楽しみ。2015/01/04