内容説明
家族をこよなく愛する小泉は中堅の商社に勤める平凡なサラリーマン。彼は、土地売買の極秘巨大プロジェクトを立ち上げた。必死の思いで進めた仕事のメドがたったある日、計画を知るという謎の不動産屋から呼び出される。彼を待っていたのは暴力団だった。家族を狙うという脅しにも負けず敢然と立ち向かう小泉だったが……。容赦ない暴力とせつない愛が交差する中島らもの遺作バイオレンス小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
65
昨今の言葉でいう“パワーワード”そのものの表題の通り内容も滅茶苦茶ながら、非常に痛快な勧善懲悪エンタメ小説。強姦のシーンが度を越して惨いので気分が悪くなる人もいそうだけれど、そこからのストーリーの加速度は見事で、伏線もきちんと回収されるのでスッキリ。奥さんが書いた巻末の解説によると、このようなものを推敲も殆ど必要としないまま一気に書き上げたらしい。プロですな。まあ、主人公があんな目に遭って車椅子になってからの立ち直りの早さといい、対決シーンのあっけなさといい、ツッコミどころもなくはないけど。一気読み推奨。2020/12/12
乱読亭AKIRA@晴釣雨読🎣
37
主人公は平凡な商社サラリーマン。仕事上で暴力団と関わることになり、その暴力団にある日、家族みんな襲われてしまう。過激な暴力シーンの描写もあり、読んでいて辛いと感じることもありましたが、最後は爽快なクライマックスとなっているので、スカッとしました。主人公が会話の所々でギャグを言うのもクスッと笑えて面白かったです。らもさんはやっぱり笑いのセンスあると思いました。2021/09/11
hope
31
らもさん、あんた、これはもう、メチャクチャだよ。笑 すごくいかれてて、ほんとにイカしている。車椅子も飲酒運転になるのか? いや、突っ込むところはそこではない。知性とユーモアとバイオレンスと友情。そして強烈な哀愁と猛烈な愛。らもさん18冊目。★★★★2019/11/08
黒猫
28
中島らもさんの体験を見事にストーリーに取り入れた作品です。商社で働く順風満帆の男に突然目の前に訪れた不幸。殺人罪でも7~8年で出所する事実に納得せずに自らが司法となり罪人を裁くストーリー。和製ターミネーターみたいな感じで疾風怒濤のごとく物語が進む。やはり主人公はアル中ですが仲間のやっちゃんとガーリックが良い。仲間の大切さをらもさんが書くとこうなるのか。最後、組のアジトに乗り込む時に忌野清志郎の「雨上がりの夜空に」を歌うところでジーンと来てしまいました。あとがきの奥様の言葉にらもさんの苦悩が表れている。2018/03/25
kirin
27
中島らもが最後に挑んだ暴力と愛の復讐物語。作者初読み。前半の平和な家庭の様子から一変、妻が襲われるシーンは辛かった。ヤクザによる強姦・殺人の描写がえぐいほど克明なのに対し、それに対する主人公の内面や復讐の描写が淡白なところが気になったが、それもクライマックスへの伏線となっていて最後は爽快だった。主人公の飲み仲間達もとても個性的であたたかくてブッ飛んでいていい。暴力シーンはあるが全体的にユーモアに溢れ、読みやすかった。次は『ダガラの豚』を読んでみたい。2017/02/02