内容説明
誰かと一緒に生きるということ。それは、隣にいる誰かを、100パーセント受け入れること――。母親が弟を道連れに無理心中したという知らせを受け、林間学校からとんぼ返りしたなつき。痛ましい記憶に支配された心をときほぐしたのは、結婚相手の優、ときおり新居を訪ねてくる少女・佐野佳奈子、そして一面に広がる心の草原だった――。圧倒的な哀しみにふるえる心が優しく共鳴する、感動の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
96
繊細で詩的な物語。解説を担当している江國香織さんの作品と共通するところがある。10代の頃に心に大きな傷を負った女性なつきが、自分の生を見つめ直す物語。なつきが出会う佳奈子という少女が魅力的だ。佳奈子は、どんな人でも心の中に草原を持っていると言う。そこに行けば、傷ついた心を癒すことができる。幻想的でありながら、地に足がついた物語だ。親と子供の難しい関係や家族を失う悲しみなどが、現実的に描かれている。なつきが苦しい葛藤を経て成長していく姿は読み手の心を揺さぶり、勇気を与えてくれる。2018/08/18
(C17H26O4)
74
あまりにも純粋で優しくて、子供のためのお話と錯覚しそうになるけれど、違う。これは紛れもなく大人ためのお話。素直じゃないわたしは悲しい。だって思ってしまうから。なつき、そんなに信じてしまっていいの?まあちゃんにも佐野佳奈子にも後で傷つけられてしまうかもしれないよ。草原は素敵なところとは限らないし、行ったら帰って来られないかもしれないよって。本当の誠実さに触れたようで戸惑った。率直な心を覗いたようで怖くなった。居心地が悪いくらいに優しい強さは、澄み渡る空と緑に輝く草原をわたしにも見せ、心地よい風を感じさせた。2019/04/09
奥山 有為
11
おもしろかった。こういう話がもっと読みたい。2016/10/12
hiromura
9
3年ぶり野中柊さん。 見つけると嬉しい作家さんなのだが、読メでの登録数は少ないのね。母と弟が無理心中した主人公と、夫の教え子の少女。ファンタジー的な感じもして、あまり入り込めない。解説の江國香織さんの作品は大好きだが、同じようには感じられなかった。2023/08/08
cithara
8
「草原」が心の逃避場所であるならば、それは「宗教」みたいなものか? 心が苦しくなったとき頼るものがあれば精神的に安定するのに、と最近よく思う。柊さんの食べ物の描写が相変わらずステキ。「しゃく、しゃく、しゃく、と豪快に噛み砕くと、甘い汁が口の中いっぱいに広がって、熟した夏の匂いがつむじのあたりからすっと抜けてゆくような気がした。」この一文を読んだだけでもうすいかが食べたくて仕方ない。シーズン前だから無理だけど。解説の江國さんは主人公のなつきがものすごく残酷と書いていた。でも私には夫のまあちゃんの方が怖い…2016/05/22
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