内容説明
心の医者にとって救済とは?
「わたし」を救ったという「透明な裁縫箱」が数十年をかけて結晶化し、本という姿になって今ここに現れた。
私小説にして哲学書、文学にいざなう力に満ちた、豊かな本だ。
小池昌代(詩人・作家)
精神科医は還暦を迎えて危機を迎えていた。無力感と苛立ちとよるべなさに打ちひしがれる。しかし、同業にかかるわけにもいかない。それならいっそ街の占い師にかかってみようと思い立つ。はたして占いは役に立つのか。幾人もの占い師にあたっていって、やがて見えてきたもの……。人間が“救済”されるとはいったいどういうことなのか。私小説的に綴られる精神科医の痛切なる心の叫び。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
64
【一つ一つのことが明るみに出るたびにそれは、光ではなく、影を投げかけた】(登録洩れ)この本の発刊を知った時、その題名に感嘆したものだ。「さすが、春日先生」と。一読し、先生は還暦を機に危機を迎え、無力感と苛立ちと寄る辺なさに打ちのめされたが、同業者に頼るわけにもいかない。それなら、いっそ占い師にかかってみようと思い立ったのか、と了解。しかし、転んでもただじゃ起きない式に、その経緯を私小説的エッセイにしてしまうところが、先生らしい。そして、こうした文章を綴ることが、先生の自己治癒になったということだったり。⇒2022/06/13
どんぐり
64
精神科医は、クライエントがいるように占い師と同じ立ち位置で仕事をしている、いわば同業者のようなもの。精神科医が占い師を訪ねることがあるのか、はなはだ疑問に思いながら、その尋常ならざる事態を書き連ねる心性に疎ましさを感じた。境界性パーソナリティ障害のメンタリティに近いとか、私の人生における人間関係は「私と母」で成り立っていたなど、普通の人が読んだら恥じらうような話を自虐的に書いている。こんな高齢者にはなりたくないと思う。なんでこんな自傷行為の「自己嫌悪の物語」を読まなければならないのか、私小説を読んでいるよ2016/10/15
harass
52
この著者の本は底意地の悪さと文章に惹かれてよく読むのだが、長年、精神科医としてカウンセリングをしていて、永遠の拗ね者の著者が救いを求めて占いを試すというのはまさに驚きだ。その経緯と結果と占いというものについて論じてある。人間という不思議な生き物についてのエッセイ。非常に個人的主観的な著者の考えに、反発するところもあるが、妙に納得できてしまう。この作家のファンであるならぜひ。著者の業務上の経験によると人間が狂いかたは、六種類に分類できるのだという。たった六種類だという。2016/03/26
fishdeleuze
45
機能不全の家庭に育ったり、母との関係に問題があり、自己肯定感が持てず、自尊心が著しく低い。そして、ボーダーにきわめて近い自身の性質(いわゆる境界例)。癒やしと救いを求めて占い師のもとへいく精神科医。よくここまで書いたと思う。自分自身のかかえこんだ闇を見つめるのも難儀な仕事だが、それを客観的に記し、いわば晒すのはきつかっただろう。ネガティブではあるけれど、共感する人はいるだろうし、ある人にとってはひょっとして癒しになるかもしれない。著者が言うように、人生は相似と反復と言うかたちに収斂されるものだから。→2017/11/04
澤水月
38
あの一言居士な春日先生が弱り占い師の前で嗚咽…それが白眉場面かと思ったらあっさり先! また生まれ星の位置が◯◯◯◯にそっくりと言われる!!納得した体で◯◯の悪口雑言並べてて爆笑。◯◯多分私の交友界隈で最も嫌われてる奴。突如舞城王太郎の名が出たり普段のように文学紹介と随筆を行き来。鬱いとき読むとよくないかと思ったら全然逆で観察眼鋭く客観性あるから申し訳ないが笑え笑えて…しかしやがて母親との関係を突き詰めに突き詰め…よく苦しい中書き上げたと最後胸が詰まる。正直個人的に存じ上げており最近心配していたので動悸…2015/12/20
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