内容説明
叔母の面影を秘めた萩姫を慕い大伴次郎信親は、信濃の国をあとにして京へ上る。不動丸を頭とする盗賊集団が暴れ廻り荒廃の極みに達している都では、次郎が思い焦がれる萩姫は左大臣の子・安麻呂に惹かれている。一方、笛の名人でもある次郎は笛師の娘・楓に愛される。綾なす恋は、いずれも実ることなく、秋風吹きすさぶ野の果てに消えていく。今昔物語に取材した王朝ロマン小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
78
「今昔物語」から素材を集めてパッチワーク的に紡ぎ出された平安悲恋物語。信州から都に出てきた若き田舎侍、都を震撼させる盗賊、左大臣の子息でボンボンのプレイボーイの3人が、入内間近の美しき姫をめぐって争い合うお話。恋物語自体は不完全燃焼のまま、なんだかなあの幕切れ。一番の見所は盗賊の正体か。2015/06/27
メタボン
28
☆☆☆☆☆ 淡々として美しい文章により悲恋が展開される。今昔物語の世界にどっぷりと浸った。解説によるとこの物語の元となる直接の話はないものの、物語中のいくつかのエピソードの題材となる話が今昔物語の中にあるとのこと。芥川龍之介とはまた違う雰囲気の物語が良かった。次郎、萩姫、楓、安麻呂、不動丸、それぞれの恋は成就せず、ただ風ならぬ笛の音のみが寂々と嫋嫋と響き渡るのみである。2018/11/06
空箱零士
9
★★★★ これが失恋の物語であることは言うまでもないとして。恋を失うとはどういうことか。それはある情念を失うことである。叶わぬ思いを深奥に閉じ込めること。あるいは運命によって、あるいは死別によって。この物語は結末に何も残さない。一つ、永別の想い人の笛を遺して。その音色のみが在りし日の情念を想起させる。かつてそこにあった情念は宿命にて儚く散り、喪われる。その手に宿命を握ろうとした操り手でさえ喪失を目の当たりにするのみだ。だからただ、風のかたみを聴け。風に乗り時空を超えた情念、その歌を、僕らの心に残すために。2014/08/28
咲蘭
4
なんと切ない!次郎の優しさと強さが沁みる。2013/12/26
うめ
4
美しい物語なのですが、救われません。美しいんですけど。うわーってなります。(何て感想だ)
-
- 電子書籍
- 仮面夫婦~離婚を決意したら人生楽しくな…
-
- 電子書籍
- ももいろモンタージュ 3巻 まんがタイ…
-
- 電子書籍
- 初恋風味~不器用な女の子たちの恋愛模様…
-
- 電子書籍
- 検証恋愛~マッチング相手は弊社の社長~…
-
- 電子書籍
- 魔法使いの婚約者: 5 異国より来たる…