内容説明
耳の奥に刻まれた《音》の記憶をもとに半生を再構築する。《音》は茫漠たる過去を鮮かに照らし出す。――ヴェトナムの戦場で体験した迫撃砲の轟音。家庭をかえりみない夫に対して妻と娘が浴びせかける罵声。アマゾンで聞いたベートーヴェン……。昭和29年にサントリーに入社し、芥川賞を得て作家となり現在に至るまでを、一人称「私」ぬきの文体で綴る野心作。日本文学大賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さっと
6
開高健の自伝。現サントリーに入ってからのコピーライターとして安定(?)した日々と個性的な仲間の面々、そして小説家への第一歩となる『パニック』の題材(新聞記事)とのドラマチックな出会い、家庭を顧みない夫に浴びせられる嫁娘の容赦ない糾弾など、二分冊の前編「破れた繭」が『青い月曜日』と重なる部分が多かったぶん、個人的にこちらは読みごたえがあった。それから、本編とは関係ないところだけど、流氷を400字近くかけて説明する箇所があって、もし「開高健と北海道」展を開催するなら、もう入り口にこの一文を掲げたい。2019/07/07
あかふく
2
開高健の自伝。作家デビューから北米南米まで。開高はそもそも書きたいものがあって作家になったわけではなく、なんとか頭に思い浮かんだ表現を使って書き継いだという感じの作家だ。あるのは文体だけであって、その形を求めるが、到達点である『輝ける闇』はその文体すら失ったところで書いた作品だった。しかし喪失は再び訪れる。とにかく様々なものを見て、そこから喚起される形でしか開高は書けなかったのだろうか。「自分の底には何もない」と気づいていたはずの作家の自伝は奇妙に歪んでいる。2013/03/03
hsemsk
1
「開高健 電子全集17」にて読了。2018/05/02
meg
0
文の密度が濃いので他の作家の作品が薄く感じてしまう弊害がある笑 おもしろいなあ〜… 『夏の闇』にも出てきたカエル飲みおじさんが出てきたので本当の話っぽい。 妻と子供がいるのにこんなに旅していて家庭は大丈夫だったのか?そのあたり詳しく知らないので単に心配になった2025/08/31
eremail
0
ヨーロッパ、ヴェトナム、北米南米等、巣に帰還しては安寧とできず、かといって旅先の過酷な状況でも己の怠惰、曖昧模糊さに辟易しつつ、ふと耳にした一人の音に心を震わせる、鋭い感性を持ち続けた著者晩年の記録。2023/09/28
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